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パラオ在住者、元在住者、パラオ関係のお仕事の人、パラオを愛する人々によるパラ×パラオリジナルコラム


パラオのロックアイランド

サンゴ礁でスノーケリング

魚と戯れるダイバー

海草場

発達したマングローブ域

れを読んでいる方は既にパラオの海へ訪れたことがありパラオの海に魅せられた人、またこれからパラオの美しい海へ行ってみたいと考えている人だと思います。

 そんな素晴らしいパラオの海ですが、この海がどれだけのポテンシャルを持っているかご存知でしょうか。スノーケリングでもスキューバでも、実際に海に潜ったことのある人ならパラオには魚が非常に多いと感じたのではないでしょうか。
 そう、パラオはミクロネシアの中では群を抜いて魚の多い場所なのです。ではいったいどれだけの魚が生息しているかというと約1400種もの魚が生息しています。ミクロネシアにおける他国で次に多いところでも約500種。グアムやサイパンを含めた北マリアナ諸島全体でも800種以下。パラオの魚種数は圧倒的なのです。いやいや、ちょっと西へ行ったフィリピンや南のインドネシアに比べたらかなり少ないのでは?と思う方もいるでしょう。比較してみると確かにフィリピンやインドネシアなら2500種以上は確認されています。でも、ちょっと考えてみてください。国の面積で言えばフィリピンはパラオの約600倍、インドネシアに至っては3800倍。海岸線の長さで比較したら途方もない差になります。
世界地図上で見たら一目瞭然、パラオは殆ど点。単位面積で考えたら強烈な種数です。では、なぜこんな狭い空間にこれだけの魚種が生息できる素晴らしい海なのでしょう。それはパラオが小さいながらも非常に多様度の高い環境を持っているからなのです。多様度が高いと一口に言っても分かりにくいとは思いますが、つまり外洋、深海、外洋に面するサンゴ礁、中内湾域のサンゴ礁、礁湖、砂浜、閉鎖された内湾、泥地、マングローブ域、河口域、河川、湖、渓流と水域だけでも様々な環境を包括しているのです。これだけの環境があればそれぞれの場所に適応した魚が増えるのは至極当然。また、種数に限らず単純に魚が多いのにも理由があります。パラオは南北と西側に巨大なリーフが発達していますが、その内側や奥にある海草場(アマモ場)と海岸のジャングルであるマングローブ域が発達していることがカギとなっているのです。

 これがなにを意味しているかというと、多くの魚達はこういったエリアを初期生活史の場として利用しているのですが、簡単に言えばパラオの内湾には魚の保育園や幼稚園がたくさんあるということ。また、もう一つの理由として、狭い島国でありながら余り水不足に悩まない豊富な雨も影響していると考えられます。雨が多いということは、河川が発達し島の周囲には汽水域が増えます。汽水域には稚魚の成育の重要なカギとなるプランクトンが発生するのです。すなわち、内湾域に子供(稚魚)の生育場が多く餌が多いということは基礎生産力が高い、ひいては大人(成魚)の数も増えるということなのです。これは魚に限ったことではありません。これだけの多様な環境があれば無脊椎動物の数も当然増えます。パラオの海にワニやジュゴンなどの大型の生物が生息していることもうなずけます。
 そう、内湾域環境の充実がパラオの魚種と数を増やしていたのです。
 しかし、最近そんなパラオの海をダメにしていく深刻な問題が発生しているのです。
沿岸開発による無計画な内湾浅海域の埋め立てやマングローブ域の伐採、開発工事による土砂の流出、そして何も考えない自然環境へのゴミの投機など日本でも問題になっていることがパラオで確実に進行しています。


海洋生物が付着しない排水が流れる海岸

して最近特に気になるのは都市排水の問題。パラオには一応下水処理場があり皆さんが利用するホテルも含め首都コロールにおいては殆どの民家から下水が集められています。しかし問題なのがこの下水処理場が余り機能していないことと、量が増えるとオーバーフローしてしまい、そのまま海へ流してしまっていることなのです。以前からそのような場所は下水のバイパスとして利用されているため、珊瑚などの付着生物の成育がないとは思っていましたがパラオの海の底力である大きな潮の干満といわゆる干潟の浄化能力によって汚染は緩和されていました。しかし最近では場所によってはいわゆるドブの臭いのような悪臭が海から漂ってきているのです。濁り方や浮遊物も相当増えており内湾環境に与えているダメージは深刻です。
 先にも触れましたが、パラオは狭いながらも非常に多様度の高い環境を持っています。しかし、狭い環境へこれだけのディープインパクトを与えたらその影響は大きいはず。狭いだけに環境破壊は加速度的に進行するでしょう。
 ある臨界点を超えたら生態系は一気に崩壊するかも知れません。実は既に内湾域から姿を消してしまったサンゴや魚もいるのです。
 パラオの海を支える内湾域が崩壊したらどういうことになるでしょう。
 そして一番問題なのはパラオ人自体がこの状況を余り意識していないということ...。
 ただ、冒頭でも触れたようにパラオの海のポテンシャルは非常に高く、自浄能力も相当であり、なんとか環境は保たれているように見えます。特に外洋近辺ではエルニーニョによるサンゴ礁の壊滅から復活してきているサンゴ礁が目に付くため、一見パラオの海は益々美しくなってきているように感じます。しかし実際には内湾域の汚染は着々と進行しているのです。
 個々のサンゴを守ったりするのも大切ですが、今パラオの海だけでなく陸上や生活環境を含めたグローバルな状況がどうなっているのかを知り、伝えられるようになることがパラオの海を守り愉しむための第一歩なのではないでしょうか。

坂上治郎 坂上治郎 (さかうえ じろう)
1967年生まれ。東京都出身。北里大学大学院水産学研究科修士課程修了。水産学修士。専門は熱帯域における魚類生態学で主としてハゼとテッポウエビの共生関係の解明を目的としたフィールド研究を行っている。サザンマリンダイバーズ所属のガイドでもある。
URL; http://www1.neweb.ne.jp/wb/smd/



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