オリジナルコラム
nicedaytour
執筆者: 秋野 大
vol.108 幸せのおすそ分け
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れは、この前のこと。現地のエージェントに勤める友人からの電話で事は始まった。「なぁ、秋野。ホテル内でウエディング撮れる?」とその友人。数日後、ハネムーンカップルのスナップを某リゾートの敷地内で撮影して欲しいということだった。パラオに来る前には、人の結婚式を頼まれて撮るバイトもしていた時もあった。しかし、パラオに来てからはウエディング関係の撮影はほとんどしていない。勘も鈍っているだろうし、撮ったこともないリゾートの敷地内での撮影だから不安も残る。当たり前だが、ウエディング撮影は“やり直し”がきかない。本番前のリハーサルがとても大事なのだ。
でも僕が頼まれたのはリハーサル無しの一発勝負だそうで、請けるの躊躇してしまう。しかしウエディングの仕事は嫌いじゃない。撮っている自分も感動できるから、やっていて気持ちの良い仕事なのだ。“どうやって撮影をやるか”は後で考えようと決めて、僕は手配担当であるその友人にOKをした。

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当日、約束の1時間前にリゾートに入った。初めての撮影だから“ロケハン”という下見を入念にしたかった。あれこれ考えながら見ているうちに、あっという間に集合時間。焦ってエントランスへ向かう。エントランスの日陰に、ひときわ目立つ真っ白の素敵なウエディングドレスの新婦が立っていた。横にはさりげなくエスコートするグレースーツの新郎が居た。挨拶を交わして撮影の流れを説明する。元気な印象の新婦と、ちょっと落ち着いた雰囲気の新郎。2人とも笑顔の素敵なカップルだった。
早速エントランスから撮影開始。少し新婦の笑顔が硬いから雑談をしながら打ち解けてもらう。こういう時の会話って大事。いいカットが撮れたら積極的に写真をモニターで確認してもらう。新婦から満足そうな笑顔が出た。その後は表情も和らぎ会話も弾んだ。いい感じのペースで撮影と会話が盛り上がっていった。


「日本では挙式はしないで海外に来たの」と2人は話してくれた。どうしてパラオに?という僕の質問に「新婚旅行をパラオにしたのは、行ったことのないところで海があるところが良かったから」だと新婦が笑顔で答えてくれた。それならば、と撮影場所を海の傍へ移動する。南国のやわらかい風が心地いい。風が新婦のベールを軽く揺らす。こういう演出は有り。二人の表情がさらに良くなった。プールサイドのビーチチェアに座ってもらって望遠レンズで撮っていたその時、ふと新婦が自分の妻とオーバーラップした。実は僕らも挙式をしていない。そんなの必要ないと2人で決めたことだったが、レンズの中で幸せそうな新婦を見ていたらドレスもアリだなと思えてきた。いままで何組もウエディングの撮影をしているがそんなこと思ったこと無かったのに・・・。結局、撮影時間1時間半でシャッターを切った回数は450枚だった。いくら連射を使っていたからといっても少し多すぎた。感情移入し過ぎたのかも知れない。ま、いっか。

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後日、新婦からエアメールが届いた。僕の写した写真で作られた結婚報告のはがきと一緒に入っていた手紙にはこう書かれていた。「人見知りの私なのに、撮影が進むにつれて表情が和らいだ」と。 そして「パラオで出会った方の多くにホスピタリティーの高さを感じ、楽しむだけのつもりで行ったハネムーンで多くのことを学びました」とも書かれていた。パラオで沢山のいい人達に会われたのだろう。僕はたった1時間半だったけど、その中に入れてもらえて誇らしかった。2人の幸せのお手伝いが出来たことを嬉しく思い、そして2人が出会ったパラオでの人たちへ感謝をしつつ、新婦からの手紙を読みながら、僕は妻にどうやってドレスを着せるか考えていた。

 

 

 

 

 

秋野大

秋野大 (あきの ひろし)
デイドリームパラオ
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vol.88 パラオの床屋さん事情

 

本なら床屋さんか美容室に行くのが一般的というか当たり前。でもこっちでは、男の人は結構自分で切っちゃう人も少なくない。理由は美容室に行きたくないから。
まずはパラオの美容室事情を説明しよう。パラオには理容室と美容室の分けはない。美容室のみで、マッサージや、ネイルサロンなども併設というか一緒にやっちゃっているような総合美容サロンのような場所が多い。そして美容師さんはほとんど全員フィリピンから来ている人たちで元男性が多い。元男性というかオカマちゃんなのだが、彼ら(彼女ら)に慣れるまで最初少々戸惑うことも多い。多少女性もいるようだが、困ったことに、オカマちゃんのほうが腕が良かったりする。
フィリピン人のビューティシャン(美容師さん)は皆一様に自意識が高く、美しいことには相当の拘りを持っている。着るもの、見るもの、おしゃれには相当気を使っていて、髪の毛一本でも乱れると「あらあら」と僕の髪を切るのもそっちのけで手入れを始めてしまう。困ったものだ。

 

そして彼らはオカマちゃんだからと言って差別をされるわけでもない。日本だとなんとなくマイノリティーっぽいイメージがあるが、こっちではそんな事もない。これは後から知ったのだが、フィリピンではオカマちゃんは一般のノーマルな人たちと分け隔てなく生活をともにしているのだ。
ちなみにパラオの人たちはどのように彼らと接しているのかと言うと、意外にも意外、全然普通なのである。もちろんジョークを言ったり、からかったりはするが、避けたりするようなことはない。日本よりよほど受け入れられていて、ここでもまた市民権をバッチリ得ているのだ。

店に入って椅子に座ると、後ろから低めのトーンで「あ?ら、いらっしゃ?い。今日はどんな感じに切るの?」と挨拶をしてくる。ついでに僕の肩をちょっとネチッこく揉み始める。「今のままのスタイルで、全体に短くして」と笑顔で(ここ大事)で伝えつつ手を払う。手を這わせながらカットの内容を聞く彼女(彼?)達の目は結構マジだったりするから怖い。(笑)さりげなく、でも嫌な感じにならないよう、適当にあしらうことが重要なのだ。たまにノリが過ぎる場合もあるので「触らなくてもいいから早く切ってよ、時間無いんだ」と急かす。客の時間を遅らせられないと思うサービス精神は万国共通のようで、これはかなり有効な手段だ。僕は常用している。

髪を切ってもらいながらいろんな話をするのだが、意外に困るのが身の上話と彼氏の話。売れっ子美容師にはきちんとした彼氏(男ですよ)がいるらしい。「ねえ?、あたしの彼氏がさあ?」と始める彼に何でつきあわなくちゃならんのだと思いつつも、機嫌を損ねて僕の髪の毛の出来、不出来が左右されるので「そーだよねぇ」などと大人の対応も忘れない。

最近の僕の調査では、街中の美容室ではなくホテルに入っている美容室は、同じオカマちゃんでも品がいい。10年もずっと触られ続けていた僕はこれを知らなかった。まったく触られ損じゃないかと思ったりもしたが、ホテルの美容室は街中のよりも金額が倍の$10である。「うーん、倍かぁ…」と一瞬思う。でもよく考えてみれば$10だって日本から比べたらべらぼうに安いのだ。悩んでいる場合ではないのである。

そんなパラオの床屋さんなのだが、日本から来る人たちにはあまりおススメはしない。技量はやはり日本の美容師さんのほうが数倍上だと思う。そう、パラオで髪を切るには多少の勢いと諦め、そしてユーモアが必要なのだ。でもまあ、彼らとのコミュニケーションも国際交流の一つかもしれないし、髪を切るのが不安な人はマッサージや、ネイルだけでも楽しめるはずだ。興味があったらチャレンジしてみてはどうか。ちなみにノーマルな人たちも沢山(当たり前だけど)居るので、どうぞご安心を。

 

 

 

 

 

秋野大

秋野大 (あきの ひろし)
デイドリームペリリューステーション
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vol.50 シンパイナイ、モンダイナイの国

ラオには多くの日本語が混ざっています。聞いた話では400語以上らしい。400語以上も混じっていればあちこちの会話の中にそれを聞いて取ることができます。ちょっと思い出してみても、ヒゴウキ(飛行機)、ヒゴウジョウ(飛行場)、デンギ(電気)、サシミ(刺身)、オイシイ(美味しい)、センキョ(選挙)、ニュウイン(入院)、ハダシ(裸足)、サンサロ(三叉路)、セイネンダン(青年団)、イッパン(一般)などなど。変わったところで、デンキバシラ(電柱)や、エモンカケ(衣文掛け=ハンガー)、サルマタ(猿股=ステテコ)、チチバンド(乳バンド=ブラジャー)などがあります。

 

さすがにラジオを聞き取ったり、会話を完成することは出来ませんが簡単なコミュニケーションくらいならなんとかなります。そんなお国柄だからでしょうか、日本びいきな人が多いのもパラオの特徴なのかも知れません。

そんな中、よく使かわれて尚且つ分かりやすい言葉では、「問題」とか「大丈夫」があります。使い方も意味も日本語と同じ、だから何の違和感もなく使えますね。例えば、誰かに何か出来るかを聞くときに、「Can you do the ○○○?ダイジョウブ?」となります。当然回答は「ダイジョウブ、ダイジョウブ!」と返ってくる訳です。まあパラオの人の場合、おおらかなので多少大丈夫じゃなくてもダイジョウブ!と返ってくることもあるので注意が必要ですが。(笑)

そして「問題」も同じように使うことができます。「Do you have something モンダイ?」と聞くと「No! ジャガモンダイ」と返ってきます。「ジャガ」は「無い」なので、「問題ないよ!」という意味になります。まあパラオの人の場合、おおらかなので多少問題があってもジャガモンダイ!と返ってくることもあるので注意が必要ですが。(笑)

僕が仕事中によく使う言葉は「カルイ」という言葉。「重い」「軽い」の軽いでは無く、「できる?」「できない?」を尋ねるときに使います。どちらかというと「楽勝」という意味合いに近い気がします。何かを人に頼みたいとき、とりわけちょっと煽り気味にやらせたい時に使うと効果的。「Hey! Moy, Can you ○○?カルイ?」(なぁモーイ、○○できる?楽勝?)といった感じでしょうか。このカルイを使われると、ほとんどのパラオ人は断りません。(笑) どうしてもやって欲しい時のとっておきの言葉だったりするわけです。

そんな日本語がミックスされたパラオ語のような、英語で僕らは普段会話をしています。きっと今日も。海のボートの上ではスタッフ同士で話されていることでしょう。

「なあ、今日ドコドコ大丈夫? 」
「ダイジョーブダイジョーブ!」

「本当?風あるよ。問題ない?」
「モンダイナイモンダイナイ」

「カルイ?」「カルイカルイ!」

たまに本当かよ?と思うこともありますが、そこは国民性。おおらかなパラオは基本全てOKの、シンパイナイ、モンダイナイ、ダイジョーブの国なのでした。 

溝上拓哉

秋野大 (あきの ひろし)
デイドリームペリリューステーション
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vol.18 幻のバナナ

きなりバナナなのだ。今、目の前の窓から庭が見える。そこに1本だけあるバナナの木がある。僕はバナナを良く食べる。甘いものは苦手な僕がバナナだけは別なのである。

あの黄色くて色っぽい“しなり”のあるボディー。ほんのりと青臭い、程よい酸味と甘み。そして他の果物には無い何本もが一つの束なって出てくる大軍勢的な房。さらに消化吸収が早くて急なエネルギー補給にも適していて、食物繊維も多く含んでいるとくれば、食べ物にうるさい健康志向なお母様方のハートも“わしづかみ”である。(ホントかな?)
さて、日本でも普通に目にするバナナだが、実はバナナって世界中にものすごい種類があるのだそうだ。小さいものは15cmくらいのモンキーバナナから、大きいものは長さが50cmにもなる、その名の通りジャイアントバナナまで実に250種以上ある。そしてここペリリューには、その250種のうち6種類のバナナがある。

かし、その6種類に入っていない幻のバナナがこの島にはあった。その名も“マンゴーバナナ”。

このマンゴーバナナ。幻というだけあってペリリュー島にはその木が1本しかない。だから、なかなか実も生らないし、島の人たちでさえも食べたこと無い人が多いという超レア種なのだ。先日それを運よく食べることができた。自称バナナ通の僕としてはこのチャンスを逃さない。早速一ついただいた。
写真にあるようにサイズは缶コーヒーより少し大きいくらい。普通のバナナの半分くらいの長さで、太さは2倍ほど。外側は茶色に変色して少しやわらかくなってきたら食べごろのようだ。皮をむいてみると黄色い果肉。ムチムチともモチモチともいう、やわらかさと弾力、そして粘りがある。一口食べてみると味はマンゴーとバナナを足して2で割ったような味。ううん、違う。名前の通り「マンゴー味のバナナ」だ。最初に名付けた人はすごい言い得ている!
甘い、香りの良いマンゴーの味。しかし食感はバナナ。正直これはウマかった!初めて食べた感覚で、モッチリとした果肉は力強い甘さを持ち、これだけで相当にパンチがある。アイスなどと一緒に食べても美味しいのだろうと思った。
このマンゴーバナナ、食べ方にルールがあって芯は食べないのだそう。何故だか分からなかったので食べてみた。確かに芯は少し硬めで“エグイ”感じが少ししたが、まあでも食べられないこともなかった。

その日は、幻のバナナを食すことができた幸運に機嫌を良くしながらショップに戻った。そして思った。あの味を、あの食感を皆にも試してもらいたいと。しかし、あの木はペリリューに1本しかない。悩みに悩んだあげく、僕は思った。 「バナナとマンゴーを混ぜて食べたらどうか?」 後日、試してみたがなんだか違っていた。雰囲気は近いがやはり本物のそれとは違う。やはり幻の味は幻だったか。
横でマンゴーバナナを食べたことの無い友人は美味しそうにそれを食べていた。これだって、ちゃんと美味しい。冷えたマンゴーとバナナを食べながら、いつまた食べられるか分からない幻のマンゴーバナナのことをしばらく考えていた。 

秋野大秋野大 (あきの ひろし)
デイドリームパラオ
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vol.1 ペリリュー島に暮らして

じめまして。ペリリュー島でダイビングショップを運営している秋野といいます。今月からこのパラオ×パラオに寄稿させてもらうことになりました。よろしくお願いします。

と、挨拶も終わったところで、早速いつもの話し言葉で書かせてもらいましょう。どうもこの書き方でないとペンの調子が悪くて。

ご存じない方もいると思うので、まずはここがどんなところかを説明しましょう。ペリリューはパラオの中心コロールから南に40kmほど行ったところにある島。縦に10km横に5kmほどのひし形に近い形をしています。主な住人は人間、犬、猫、鳥、コウモリ、陸ガニ、イリエワニ、などなど。北側に人の集落があって、島の人口500人のほとんどはそこに住んでいます。村の中には小さな商店が6件、ガソリン商店(スタンド)が5件、洗濯屋が4件、洋服屋が1件ほど。宿は5件、部屋を貸してくれる民宿形式のところも入れればもう少し泊まれると思います。学校は6年制小学校が1校。大体それがこの村の全てです。そんな小さな島ですが、一応「州」として自治権を持っています。ま、治外法権に見えなくもないですが。お巡りさんは島に1人。基本的に取り締まりはしません。したら皆捕まっちゃうし、捕まえたら村八分にされちゃうし、大体そんな悪いことをする人はこんな小さな島にはいませんしね。そんなペリリュー島に住んでいます。そうそう、忘れていました。この島に住んでいる日本人は現在僕を入れて3人。500人中3人ですから、166人に1人の割合。そう考えると、結構 日本人の人数比率は高いのかもしれません。


て、僕の担当はペリリュー島での生活のことらしいのですが、生活のことと言ったって別に普通の生活です。特別にサバイバルをしているとか、完全自給自足をしているとかそういったことではないのであんまり期待をされても困ります。電気だって水道だってありますからね。とりあえず人間らしい生活が出来るのがペリリューの良いところ。

インフラはある程度整っています。でもとっても田舎。どのくらい田舎かというと「20年前くらいの沖縄の離島」のイメージ。オジーとオバーが沢山いて、子供が走り回って、犬と猫が平気で道路で寝ている。そんな“のどか”さが村のあちこちに残っている。そういう「スローな時間」が流れている場所なんです。その「とても田舎」加減が嫌味ではなくて居心地がいい。だからここを訪れる人たちは皆この島のファンになって帰っていきます。

田舎だからいいところ。沢山ありますが、例えば島の人たちが皆とても優しいこと。「オーイ、アキノ。魚が沢山取れたから持っていきなさい」とか、「ヘイ、アキノ。バナナが美味しく熟れたから上げるわ」なんて僕はいつも島の人たちからお裾分けをもらってくる。村をぐるっと歩いていれば、だいたい何か一つはもらって帰ってきます。なのでこの島で取れるものを僕はあまり買ったことがありません。いつも誰かがくれるから。貰ってばかり。でもそれが僕の職業ではありません。本業はダイビングガイドです。

全島で500人くらいしか住んでいないこの島では、大体みんな知合いだから、島を車で移動していると殆どの人が挨拶をしてくれます。多い時には朝町から港に行くまでに30回以上挨拶をすることもあります。でも、いいんだなぁ。その田舎さ加減が。

確かに日本と比べれば物は何も無い。不便を感じることもあります。でも僕は、ここに住む人たちの笑顔は本物だと思います。本当の心の豊かさというのは意外にもこういう場所にあるのではないかなあ。僕は最近そんな事を思っています。

秋野大秋野大 (あきの ひろし)
デイドリームペリリューステーション
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