オリジナルコラム
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執筆者: 久米 信行
vol.43 海からのご褒美

さんは「海からのご褒美」と聞くと何を連想されますか?

 

いろいろな場所でいろいろな種類の「ご褒美」があるかと思いますが、今回のコラムでは私が10年以上フィッシングガイドをしていてとても強く心に残っている釣りでの「ご褒美」にまつわるエピソードをご紹介します。

前回、いろいろなフィッシングのスタイルがある中で、”G.T”(ロウニンアジ)のフィッシングについてのお話でした。この釣りは非常にハードな釣りで、釣りの道具も大がかりならば、相手も強靭、そして何よりも「自分が投げなければ、釣れない」という非常にメンタルに左右されるフィッシングであると、お話致しました。その釣りを新婚旅行で1日だけ体験されたカップルが今回のお話の主人公です。

このお客様、実はまったくの釣り初心者…どころか何と釣り初体験の方でした。それでも「このフィッシングを一度はしてみたい!」とお電話してきました。正直、釣りを普段日本でやっている方でもハードなこの釣りを、全く釣りをしたことがない方が行うのは相当大変ですし、しかも1日だけのチャレンジでは結果を出すのも難しく、その上ボートチャーターの料金もかなりの高額等々、いろいろな意味から今一度よく検討されたら….と、お話しました。しかし、それでもお二人のチャレンジ精神は強く、また同行の奥様も「彼の好きなように」と寛容で、「それでは、私も何とか結果を出せるよう全力を尽くします」とツアーの催行の運びとなりました。

何しろ釣りをするのは初めての方ですから、道具の扱い方も全く分かりません。リーフにいるだろうG.T(ロウニンアジ)に向けてルアーを投げるのですが、「こうして、ああして」「ハイ、分かりました」と言うものの、右へ飛んだり、左へ飛んだり、ポイントまでルアーがなかなか届きません。そうこうしているうちに、午前中は早々と終わってしまいました。

昼休み、あまりの大変さにショックを受けているかと思い、「大丈夫ですか?大変だったら、午後はスノーケリングでもして楽しみましょうか?」と聞くと「いや大丈夫です。最後まで頑張ります。」という返事。だまって見ていた奥様も「好きなだけやらせてあげて下さい。」という気丈な言葉。あと半日でどこまで結果が出せるか疑問でしたが、とにかくこのカップルの熱意を何とか形にしてあげたいと思いながら、残る午後に望みを託しました。午後のスタート。だんだん投げ方もルアーの動かし方もサマになってきて、「もう少し」というところまで上手くなってきましたが、今度は肝心の魚からの反応がありません。

2時になっても、3時になっても、いまだに1発のヒットもない状況、「あのリーフに向かって!」「左の浅瀬へ!」等私の言う指示に「ハイ!分かりました」と必死に投げ、けなげに、そしてひたむきに頑張ってくれました。傍らにいる奥様はご主人を見守りながら、時々カメラで写す程度で辛抱強く見ておりました。私もここまでやっているのだから1匹くらい、せめてアタリだけでも…と思いながら時間は過ぎていきました。

夢中になってポイントを探しているうちにもう既に4時半。帰港の時間を考えるとポイントはあと1箇所。考えられる全てのポイントをやりましたが、結果は出ないまま最後のポイントになってしまいました。お客様に「一生懸命やっていただきましたが、時間的にこれが最後のポイントです。最後まで頑張りましょう。」と伝え、お客様も変わらず「ハイ、分かりました。」と短く言うと、またしゃにむに投げてくれました。最後のポイントは実は今まで釣れた実績がなく、何とも自信の無いポイントでしたが、なんとそこでの2投目、突然目の前に大きなバシャ!という水柱があがりました。ヒットです!「出たー」「耐えて!リールを巻いて!」と叫びながら、後ろにまわり体を支えてやりながらお客様を見ると、ヒットも初めて、ファイトも初めての何がなんだか分からない強烈な引きの魚に竿を大きくしならせながら、必死の思いで耐えておりました。となりにいた奥様もいきなりのヒットにびっくりしながら、懸命なファイトをする旦那さんの姿をここぞとばかりに夢中でカメラに収めており、まさに船上、大パニックの様子でした。

渾身のファイトの末、姿を表したのは立派なサイズのG.T、念願のロウニンアジでした。私が魚をつかんでボートに上げた瞬間、「やった!」という声にならない歓喜。最後にして最高の瞬間でした。そして「弱らないうちに写真を撮ったらすぐにリリース(放流)しますよ」と私が言うと、奥様が突然「ごめんなさい!実はもうフィルムがない!」との事。「えー!」という感じで、聞いてみると初めてのヒットに興奮して、24枚撮りのフィルムをファイトの写真で全部使い切ってしまったという事でした。その当時、デジカメは無く、フィルムカメラのみで、なんとせっかく釣った記念の写真がないという事態でした。私は「一生懸命投げてようやく釣った1匹ですから、このままキープしてホテルに帰って写真を撮りましょう。せっかくの新婚旅行の思い出ですから。」と言うと、しばらくじっと考えていたお客様は一言「大事な魚ですから、このまま逃がしましょう」と言い、「え!本当にいいんですか?」と念押ししましたが、逃がしたい思いは変わらないようで、私も複雑な思いで海に戻す作業に入りました。「本当に写真がなくてもいいのかなぁ….」と思いながら、壮絶なファイトでやや酸欠になったG.Tを、船べりで蘇生させていると、お客様が横から「頑張れ、頑張れ」と優しくG.Tの背中をなでていました。

7、8分位経った頃、魚も突然息を吹き返し、すっと青い海に戻っていきました。「良かった、帰っていった」と思いながら、改めて「おめでとうございました」と言いお客様を見ると、お客様はその場に座り込みうつむいて泣いているようでした。それを見て奥様も涙を流しており、またしても船上が感動であふれました。少し時間が経った後、お客様が私にこうお話してくれました。

「久米さん、私は今までこんなに一つのことに、結果を考えず、がむしゃらにやったことはなかったかもしれません。最初は何とか釣りたいと思いましたが、だんだん釣れなくても一生懸命やればそれでもいい、という気持ちになりました。うちの奥さんもそんな私をだまって見ていてくれました。ひょっとしたらこれはパラオの海からのご褒美なのかもしれませんね。だからこの魚だけはどうしても海に返したかったんです。写真がなくてもそれ以上の思い出が残っています。本当に今日はガイドしていただき、ありがとうございました。」私はこのお話を聞いた時、この仕事をしていて本当に良かったと心から思い、「海からのご褒美」という言葉にとてもあたたかい気持ちになったのを今でも覚えています。

あなたはこれからパラオでどんな「海からのご褒美」にめぐりあえるでしょうか? 

 

渡辺 康太郎

久米信行 (くめ のぶゆき)
1989年にパラオに旅行会社スタッフとして着任後、2000年に同会社退職、サラ・ガイドサービスを設立、今日に至る。パラオは自身最初の海外渡航地で、フィッシング他マリンスポーツ全般もパラオで習得。秋田県出身、39歳。
URL: http://www.saraguideservice.com/

 

vol.13 パラオのフィッシング

パラオのフィッシング

ラオでフィッシングサービス全般のガイドをしているクメと申します。今回は皆様にパラオの釣り情報について簡単にお知らせ致します。
まず、パラオではご存知、常夏の気候の為、時期等による釣り物の変化はあまりなく、通年いろいろな魚が釣れております。 
それでもあえて魚の時期をいうならば、3月から4月にはキハダの群れがリーフ近くまで寄ってくる為、大型もかなり狙えます。またカスミアジやロウニンアジ等の大型のアジ系はこの時期に産卵すると考えられており、それらが捕食行動に出る為なのかやはり群れでリーフ周りに回遊し、かなり頻繁に釣れてきます。ハタなどの根魚もコンスタントに通年釣れますが、4月?6月は毎年禁猟(産卵の為)になっており、捕獲はできません。そのかわり禁猟が解けた7月以降は非常に活性が高まります。4月?5月にかけてはカジキ等のビルフィッシュが回ってくるとされ、パラオでもトーナメントなど、釣り大会も多く開催されます。9月、10月にかけてはサワラが多くなり、表層に浮いてくる為なのか、地元の人はこぞってトローリングなどで狙ったりします。



のように魚を絞らなければ通年いろいろな種類の釣りができるのが、パラオの大きな魅力です。 そんないろいろな魚を狙えるパラオで、現在私が行っているサービスで最も人気のあるフィッシングを今回最初にご紹介致します。 その釣りはルアーによる投げ釣りで行う、ロウニンアジを狙う「G.T フィッシング」です。
「G.Tってナニ?」と言われそうですが、ロウニンアジを英語読みで[GIANT TREVALLY]といい、その頭文字をとって「G.T」と釣り人が言っているだけで、最近では日本の釣り番組やバラエティーでもこの釣りを紹介しているのか、ロウニンアジは知らなくても「G.T」は知っているという方まで来られる程、有名になってきました。 その「G.T」の魅力はなんと言ってもその釣り方にあります。大きなルアー(疑似餌)普通ルアーというと5センチくらい、疑似餌と書いて字の如く、エサになる魚に似せて作るのが普通のような気が致しますが、この「G.T」にだけは違います。魚とは到底思えない100?200グラムもある木で作ったおもちゃ(なんと言えばいいのでしょう??)のようなバカデカイものを投げ、魚の動きにはやはり到底ないだろう激しい動きで水面をバシャバシャさせて釣るのです。ここまで書いて、読んでいる方も書いている私も「こんな説明ではわからないなだろうなぁ?」という感じですが、なんとも上手く言葉に言い表せません。とにかく南国らしく大雑把な釣りで、かなり豪快です。 
またそのヒット、いわゆるアタリもかなり強烈です。日本の釣りではアタリを見るのに竿の先に鈴を付け、アタリが鈴の音の「チロリン」で分かる繊細な釣りが主流ですが、「G.T」のそのアタリは「ドッカーン」とダイナマイトの炸裂のような水柱と一気にルアーを捕食する為に来る強烈な引きで、全く鈴の音などはおよびじゃありません。まさに目でアタリを取る、体でその食う瞬間を感じる、本当に釣りじゃなく、スポーツと言った方があてはまるのが正直なところです。 
アタリからすぐさま強烈な引きが体を襲います。そのパワーは凄まじく、怒涛の如くラインを引き出し、その力に圧倒され、思わず頭の中が真っ白になります。そのパワーに体がのされ、姿勢を保つのに必死の状況で、周りの声など全く耳に入りません。硬く強いロッドは大きく弧を描き、ラインはどんどん出され水面を走ります。握力がなくなりかけ、体全体でファイトしないと魚がこちらを向きません。
・・・とここからの続きはここでお話するよりもそれぞれいろいろな思いを込めてパラオまでお越しいただき、ご自身で体感していただくのが一番かと思いますので、あえてお話しません。 ある人は足が振るえ、ある人は興奮に絶叫し、ある人はキャッチした喜びに泣き崩れ、同行の仲間と抱き合い歓喜します。決して大げさでなく、この気持ちは誰もが実感できると思います。

是非日本での時間を忘れ、南国パラオで1本の糸を通じ、1匹の魚の秘めたパワーを体感していただきたいと心から思います。 どうにも宣伝のような文章になってしまいましたが、今後はまた別のスタイルのフィッシングをお知らせすると同時に、釣りを通じて皆さんと一緒に何かを考え、この場をお借りし、コミュニケーションできればと考えております。今後共どうぞ宜しくお願いします。

久米信行

久米信行 (くめ のぶゆき)
1989年にパラオに旅行会社スタッフとして着任後、2000年に同会社退職、サラ・ガイドサービスを設立、今日に至る。パラオは自身最初の海外渡航地で、フィッシング他マリンスポーツ全般もパラオで習得。秋田県出身、39歳。
URL; http://www.saraguideservice.com/