オリジナルコラム
nicedaytour
執筆者: 伊井 淳教
vol.103 謎の奇怪魚を追う


 

れは夢か現実か?この言葉、どこかの看板に書いてあった気がするが・・。
この魚はいったい何だ?!

その日、かつて訪れたことのある場所へ“疑念“を晴らすべく再び探検隊の一行は向かったのである。

ずっしりと重い折りたたみボートのバッグを肩に食い込ませ、アザをつくりながらジャングルの中をしばらく進む。私は足場の悪い道なき道を久しぶりに歩いたので、日ごろの運動不足による焦りが生じ、気が付くと額に脂汗をかいていた。

道中、普段では見たこともないくらい背の高いタロの群生や、やけに鬱蒼とした森がやや不気味にさえ感じられる。さらに、なんとなく予想していたとおり日本統治時代のビール瓶やドラム缶などもちらほらと見受けられた。昔のごみは落ちていても現代のごみは落ちていない、人間の足跡もない。この様子では、最近このあたりを人が出入りした形跡はないようだ。
しばらくして、Tシャツが絞れるほどに汗をかいた頃、ようやく目的地に着いた。一行からわっと歓喜の声が沸く。そこの水面には波紋がなく、大きな鏡のように周りの景色をそっくり映し出している・・・すごく綺麗だ。こんな秘境が意外にも町に近い場所にいまだに存在していることに私は再び驚かされた。

今日は満潮に向かう時間なので干潮に向かっていた前回に比べると水の透明度がいまいちである。

これでは謎の魚が見つかるかどうか少々不安だ。そんな心配よりも目の前に広がる期待のほうがはるかに大きく、持ち込んだ折りたたみボート2隻に急いで空気を入れ準備をする。前回は小型が1隻で、これがまた狭すぎて大変だったのを思い出し今回は奮発して大きめの物も用意した。ボリュームが大きい分、期待も膨らむ。ようやく準備が整い、ボートを泥地へとゆっくり滑らせながら押し進み深場へと進路を向ける。暫く水面を漂って探索していると・・・、でた!前回と同じようにその魚は我々に接近し、挨拶をしに来るかの如くボートの周辺をゆっくりとホバリングしながらうろついてみせた。

それはアジのような魚だが目が大きく、かなり異様である。名前をつけるとすれば“バルーンアイ”トレバリー、というところだろうか。水中動画を撮って見てみると目の周辺が膨らんだりしぼんだりしているようにも見えなくはない。しかしこれに限っては単に目の病気という説も否めない。ところが!ここの謎の魚はまだ他にもいるのである。その魚は、先述の魚よりもさらに気味の悪い姿をしている。前回、少々遠めで撮影したので実物とはわずかに相似があるかもしれないが、それは全体に細長くやや緑がかっており、そしてなにより体の大きさのわりにこれがまた“目”が超でかいのである。地球上の魚か!?はじめて見たとき、宇宙人に遭遇した時の気分とはこんな感じなのだろうか・・?と、いう感想だ。

今回、疑念を晴らすべくして4時間も粘ったにもかかわらず残念ながらこの奇怪魚とは再び出会うことが出来なかった。蒸発して消えてしまったか本当は存在しない幻だったのか。誠に不可解である。だが前回カメラは実際にそれを映し出しているのは事実だ。世界初、魚の心霊写真でもない限り、やはりその奇怪魚はそこにいるに違いない!

ここまで期待を持たせておきながら打ち明かすのは心苦しいが実は私は魚には詳しくはない、いや言うならば全くの素人である。今後も継続してここの調査をするつもりであるが、万一この奇怪魚がただのサバヒーなどであったなら、私の勝手なロマンはガラガラと音を立てて崩れ去り、またその道のプロ達からは“やっぱりねー“と聞こえてくるだろう。

しかしこれが真実であるならこれはちょっとした事件ではなかろうか?
生態調査団やメディア、そして図鑑編集、観光産業界。この魚が多方面で引っ張りだこになりそうな予感もしなくはない。

その一方、危惧されるのがあらしだ。あらしを避けるため、このコラムではあえて詳しい場所は伏せておく。もしその場所に行かれる場合は生態系に影響のないよう万全の注意を払うことを忘れずにしていただきたいところである。

 

・・真実は未だにわからずじまいだが、パラオに住んでいたからこそ出来たこのミステリアスな体験に、今も感謝感激でいっぱいだ。

探検隊の調査はこれからも続く・・。

 

伊井淳教

伊井淳教
大の機械好き。今まで無関心だったパラオの生物に、最近、今更ながら興味を惹かれ始めた。
スズキ船外機パラオ代理店/AICバイシクルショップa.i.c@palaunet.com

 

 

vol.56 美しいパラオとアルミニウムと。

ロールのゴミ処理場には、リサイクルすればまだまだ使えそうな金属やプラスチックが何年も風雨にさらされて山積みにされていました。 
しかし、最近になって日本の国際援助により、それら資源ごみの分別が始まりました。そしてそれは、貴重な再資源として他国に輸出されるようになりました。プラスチックごみでは、馴染みのあるペットボトルが主に輸出され、金属では鉄を筆頭に銅や真ちゅう、鉛、アルミニウム、ステンレス等。(写真1)

 

ここでは、その中でも鉄に次ぐ身近な金属、アルミニウムについて触れることにします。

バベルダオブ本島の北西に位置するガラスマオ州では日本統治時代、アルミニウムの原料としてボーキサイト(土の中に眠る鉱物)の採掘が行われていました。また、当時の雰囲気を髣髴とさせる歌として、♪アールミーノシィゴォートォー・・♪♪という日本語歌詞とパラオ語歌詞の混在したローカルソングがあります。実に軽快で愉快な歌で私は大好きです。

ところで、ボーキサイトの採掘と聞いてどんなものを想像しますか?初めて私がその場所を訪れたときの感想は「えっ!ここが!?」という感じでした。そこはただただ漠然とした土地、強いて言うならば「段々畑?」とでも言いましょうか。いや、でもそこには何か特別なオーラが出ている気がしました。小学生の頃にテレビで見たことがあった、すり鉢状の採掘現場とは似ているようで全く違いました。(写真2)

目前に広がる景色を見てふと思ったのです。「ボーキサイトってアルミを作る原料やんなぁ?これを掘っても当然アルミは出てけえへんやんなぁ?」「一体全体どれだけの土を掘り返して精製したら自動車1台分のホイールになるんやろ?」と。便利な道具も頼もしいユンボもないあの時代の先人による尋常ではないパワーに度肝を抜かれました。そして何よりも、普段当たり前にあるアルミが原材料になるまでに費やされる多工程に驚きました。 
そして、そんな赤土から原料を採取するよりもむしろ、不用品を再利用した方が、なるほどはるかに効率的であるなぁと思ったのです。とはいえ、不用品として出るのは言うまでも無く役目を終えたもの達だけですよね。まだ使えるものにまで“エコな自分に陶酔して”スクラップにまわしだすと本末転倒です。これには要注意です!“エコ陶酔症”の代表的な報告例としては、「手当たりしだい周囲の家電等を不要なものと決めつけて分解、そして分別」というものがあります。 
これを「自己陶酔型リサイクル推進症」といいます。・・・いや、いいません。

さてさて話は変わりますが、“身近にあるアルミ“といえばジュースの缶やキッチンにあるアルミはくでしょうか。 
前述のとおり車のホイールにも使われていますし、あるいは毎日の通勤で乗っている電車の車体もそうですよね。パラオに来るための飛行機もアルミの一種ですよ。よく観察すると身の周りはアルミだらけです。私は日頃ボートエンジン(船外機)を扱っていますが、実はこれもほとんどの構成部品がアルミでできています。そしてそれのメンテナンス等をしていればそれなりにゴミとして古くなった部品が出てくるわけですが、勿論そのままでは捨てません!エコな活動に酔っている自分ができる取り組みとして“そこまでやるか徹底分別“をひとりで行っています。それは、部品の中の部品の中の部品まで。ねじ1本に至るくらいまで徹底的に分別するわけです。とはいえ無理をして工具を壊すとそれがゴミになりますからほどほどですけれど。(写真3)

ゴミになるものに貴重な時間を費やすなんてもったいない、と聞こえてきそうですが、あの赤土の採掘現場を見て先人の大いなる努力を思うと、徹底分別なしで普通に捨てる気には到底なりません。そうだろ!みんな!?しつこいですがアルミ缶1本を作るにしても、何キロもの土を掘らないといけないか! 
さらに「原材料からアルミを作る場合」と、「使用済みのスクラップから再生してつくる場合」を比較すると、電力エネルギーの必要量が随分違います。つまり再生品では二酸化炭素排出量が大幅減になるのです。 
きれいな地球、きれいなパラオを守るのも一人一人の少しの一歩から、と思います。 
いつしか私の徹底分解したアルミ屑が、世界を巡りに巡って遂にはこれを読んでいる、

あなた!のそばで又新しい役目を果たすかもしれないと考えるとワクワクしませんか?


みわ伊井淳教 (いい あつのり)
1977/03/28 生まれ 
2000年3月から移住。
趣味:各種溶接と製菓
 

vol.28 なんてデカいエンジンだ!!!

なんてデカいエンジンだ!!!

ロールにて自転車&バイク店とボートエンジン代理店を営んでいるAICの伊井淳教です。今回は初パラオ×パラオ寄稿なので、まず私の自己紹介と仕事内容を中心に。
オフィスはコロール郵便局の左隣で、お土産屋さんのYOLT GIFT SHOPと同じ場所にあり、普段は自転車レンタルと自転車及びバイクの販売修理をしています。ところがメインの仕事は、自転車云々ではなくて各ツアーボートに使われていますボートエンジンの販売及び修理なのです!それはあなたも既にダイビングショップさんで何回か乗られたことがあるかも!? SUZUKI4ストローク船外機、あの黒い奴です。
ところで、パラオの場合、様々な環境的条件によりそのほとんどの業務用ボートが和船に大きな馬力(例えば200馬力)のエンジンを2機掛け、というスタイルなのですが、これが日本ではありえない、実に驚きのスペックなのです。いやいや、間違いでも嘘でもありません。7年前、初めてこのスタイルのボートをパラオで見たとき、私は目を疑い、驚愕し、そしてなんでもかんでも速い乗り物すべてが大好きな私は実に胸が躍りました。
観光用でこんな無茶な組み合わせがあっていいものか?と思う反面、こんなのは世界規模で見ても滅多に無い・・おもしろいなぁ!これは!!というのが当時の本音でした。しかし実際この仕事を始めて以来、そのモンスター船たちの現実を見た私はこれまたビックリしまして、パラオ向けに的を絞ったオリジナルボートを作る運びとなったのです、あなたはもう乗られましたか?

そしてそれらのボートを利用されるすべての方々が不便なここパラオでも安心して快適に乗船できるよう、日々研究し改良をしてゆくのは、ここに住んでいる私のような熱中人の義務のように感じます。
しかしながらこの仕事、ツアー関係会社等で働いておられる在住日本人の方々が多くを占めいている中では、普段あまり認識されない、地味ぃぃな部類ですから、実のところ華麗なるダイビング一族の皆さんに時々憧れたり・・も。とは言うものの、とてもやりがいを感じる仕事でもあります。気を集中させ、どんな細かいネジ1本に至るまで惜しみなく誠心誠意組立て、取付けたエンジン達が、今日もあちこちのボートでお客さんを世界に誇る美しい海に連れて行ってくれていると思うと、嬉しい限りです。 



パラオの天気は、ジリジリとあたかもオーブントースターの中に入ったかのようなカンカン照りか、記録的豪雨のようなスコール、というパターンが多く、出先での海上修理は突然の雨にいつもハラハラドキドキ。「水濡れ厳禁」が多い機械類には、特に過酷な環境下なのです。そこで日除けの為の特大簡易タープや、エンジンに直接取付けられる自作の傘ホルダーなどを駆使し、この環境になんとかついていっています。
その代わりにここではもちろん冬が有りませんから、日本のように手指がかじかんでネジを回すのが痛い、とか、油落とし洗剤で手があかぎれる心配はほとんどありません。1年中、比較的に手のコンディションがいいのです。これは整備に携わる人々には凄くポイントが高いと思います。

一応、海関係の仕事ではありますが自分が海に入るのは年に数回程度。(エ?もったいない?)足だけつかるのはボートの揚げ降ろし作業などがあるのでほぼ毎日なのですが。キレイに透き通った海が仕事のフィールドなので、気持ち悪いとか、どぶ臭いなんてことはありません!ツルッとボルトを落としてしまったら青い海でスノーケリング、いいでしょう!?南の島で工具を手に、私と一緒にあなたもどうですか???


伊井淳教伊井淳教 (いい あつのり)
A.I.Company/ Advance Improvement Collaborator Corp.
1977年3月生まれ。2000年に大阪から来た、あらゆる機械を愛するするネジ男。南の島パラオで100分の1mmの精度と向き合う。