オリジナルコラム
nicedaytour
執筆者: 白石 拓巳
vol.92 夜のジャングル?大人の虫とり?


(写真1)

 

忍!

 

昔はポケットに手を突っ込んだら、ダンゴムシが入っている少年でした。

 

白石です。

幼少のころ近所じゅうの植木鉢をどかしては、ダンゴムシやハサミムシを掴まえていたのを覚えています。空き地へ出掛けてはバッタやコオロギを捕まえ、カマドウマが欲しい時は下水の蓋を開けて掴まえたりもしました。自分は幼年期(小学三年生まで)を大阪の都会で過ごしたので、それまではカブトムシやクワガタムシに生で遭遇したことがなく、代わりにカナブンやゴマダラカミキリを精力的に掴まえていたのを思い出します。傑作なのは、ある日たんすの中でダンゴムシを飼っていたのがバレて、おかんにシバき回されたことです。 掃除機の柄を振り回して、それはそれはもうカンカンでしたよ。おかん、カンカンでしたよ。無垢な子供が、プライベート・ジュラシックパーク作ってただけやったんですけど...。

子供のころはゴキブリを手で触れた人も、大人になると駄目になるって言う話しは良く聞きます。私も例に漏れず、いつからかしらカブトムシが飛んで向かってくるだけで、とっさにゴキブリと勘違いして逃げてしまう、そんな情けない様を見せてしまう大人になってしまいました。

成長するにつれ蓄積された知識や経験が、虫の痛さや、臭さ、不気味さを髣髴させ、やがて無意識のうちに虫を遠ざける体になってしまったのでしょう。しかし本能的には自分は虫を好きなはずです。いや、好きなんです!だって昔あんなにも素手で、いろんなものを掴まえていたのですから。

今回の『PALAU×PALAU』は夜のジャングルです。中年が少年の心を思い出して挑みます。『大人の虫とり』をご覧に入れましょう。しかしパラオはなんでもかんでも取ると罰せられる恐れが御座いますので、ものは取りません。写真を撮りに行きます。虫“撮り”です。まぁこれも、大人ゆえの奥ゆかしさでしょうか。押忍!

かかる経費は大したコトありません。懐中電灯の電池(単2が8本)、$6仕掛ける熟れ切ったバナナ、$1ジャングルまでのガソリン代、$10オモロー!な虫に出会うこと、プライスレス。って感じです。

パラオはダイビングがあまりにも有名ですので、みなさん「さかな、さかな。」言うてますけど、実は鳥とか虫、植物もけっこう種類が豊富です。虫に至っては5000種以上もいるそうです。しかし、それもその筈です。国土の殆どがジャングルですから。パラオはコロールがボチボチ栄えていますが、コロールですらメインロードから離れると徒歩ですぐにジャングルに行けます。バベルダオブ島に至っては、そのほとんどがジャングルです。ジャングル=虫のエリア、小学生でも分かる理屈です。

パラオのジャングルの良いところは、意外と危険な動物が少ないんです。熊やヒョウのような猛獣もいませんし、なんといっても毒蛇がいません。いただきです。いただきレンジです。かと言って1人で行くほど自分、勇気ありません。なんぼイケイケで通ってる自分でも、そこまで男前じゃありません。今回は誘ったら、二つ返事で「面白そうですね!」とノってきたM君とYOさんと3人で行くことにしました。折角ですからコロールと手を抜かず、本島のジャングルに挑みます。

本島は一周道路が開通してますので、随分アクセスが楽になりました。一周道路を車で走っていると、脇に入れるような道がところどころあります。どうせどこに入ってもジャングルなのですが、崖が怖いので、昼間下調べしておいて、良さそうなところに臨みます。下調べとかする辺り、完全に大人です。たかが『虫とり』されど手ぇ抜きません。しかも熟れ切ったバナナとか仕掛けます、完全に大人の段取りです。夜になるとわき道は真っ暗ですので、崖から落ちないように気を付けてゆっくり慎重にトロトロ走ります。車で行けるところまでが、車で行くところです。はい、エンジンを切って車から降りると、目の前はもう完全にジャングルです。

In the field です。

真っ暗な闇です。懐中電灯とカメラを持って、ジャングルに足を踏み入れます。映画『プラトーン』の1シーンのようです。チャーリー・シーンと違い、我々がラッキーなのはベトコンがいないことでしょうか。夜のジャングル、静寂のイメージがありましたが、現実はまったく静かという訳ではありません。そこらじゅうで虫やカエルが、鳴いているからです。ケロケロケロケロケロ♪リーリー、リーリー♪リリリリリリリリリ♪これらの音色が同時に奏でられ、なかなか心地良いハーモニィです。一句浮かびそうな夜です。しかしそれもこの後、我々の感極まった雄叫びで台無しになってしまうのですが...。

とりあえず昼間仕掛けたバナナに向かいます。期待し過ぎて、口から心臓が飛び出してきそうです。しかし!Just ants!なななんと、アリがたかっています...。some ants って感じです。アリえへんで、ほんま。子供のころ図鑑で「ヘラクレスオオカブトはバナナが大好物♪」って書いてたから仕掛けたんですけど、全然駄目でした(ちなみにヘラクレス、パラオにいません。)。なかなか一筋縄には行きません。開始1分で策が尽き、もうここからは懐中電灯一本で実力勝負です。『大人の虫とり』なんて、所詮こんなものです。

(上部写真1)小さなコオロギです。葉っぱの上に乗っているのをいくつか見つけました。ジャングルに豊かな音色を提供している虫の一つでしょう。

(写真2)

ワレカラのような細長い虫です。

葉の裏に引っ付いていました。

『葉の裏』はチェックポイントの一つで、こんな感じで虫が付いていることが多いです。

  

 

(写真3)

「うわっ!出たっ!」。M君が目の前で驚愕しています。「どしたんー?」と駆け寄ると、確かに出ましたっ!ナナフシの仲間です。しかもペアで合体してます。トゲトゲがあって、めっちゃカッコイイです。パラオのナナフシは、日本のか細いイメージのそれと違って、めっちゃ喧嘩強そうです。男前です。

  

(写真4)

ナナフシを撮っていると、「うーわ!拓さん、うーわ!」。M君が再びワナワナしています。視線の先に目をやると、出ました!カマドウマの仲間やと思います。殻が硬そうで、胸もせり出してて、ごっつ強そうです。日本の貧弱なカマドウマとは一線を画します。この太ももなんか、まさしくハチ切れんばかりです。「跳ねたるでぇ?!」という強い意志が、バシバシ伝わって来ます。

(写真5)

「うーわ!俺、またやっちゃったぁー!」またまたM君がアドレナリンを撒き散らしています。素早くYOさんが駆け寄り、「なんだこれーーー!」。2人して私の興味をビシバシ惹きに掛かります。「くそー!」ジャック・バウアーばりの雄たけびを上げるとともに、自分の撮っていた虫の撮影を諦め、後ろ髪引かれながら急遽私も彼らのもとへ駆けつけます。確かにやられました...。ハエ?...セミ??しかしその大きさ、10mmぐらいです。自分の中で最小のセミだった、ニィニィゼミよりもはるかに小さいです。「これセミやったら、えらいことちゃうーん!」みたいな。ジャングルが沸いています。静寂のはずのジャングルが、俺達のせいでメッチャうるさいです。(この虫調べてみるとハゴロモ類の仲間でした。広くはセミの仲間です。)

(写真6)

暫くすると、またまたM君がスットンキョーな声を上げています(M君、虫ガイドの素質あると思います。いやホンマに。)。「でたぁー!」言うてます。もー、むっちゃテンション上がってもーてます。「どないしたんー!?」と尋ねると、「妖精です!妖精がいます!」。「妖精て、ウスバカゲロウみたいなん?」「いや...ぃ妖精です!」お話しになりません。百聞は一見にしかずです。M君のもとに駆け寄り、見てみると。「あぁ?!こっち系かぁ?!こっち系の妖精かぁ???!!」どっち系やねん!って感じですが、とりあえず見たことありません、こんな虫。大きさは2mmぐらいで、全身は白く、目が赤いです。そして何より特徴的なのは、お尻から左上、真上、右上と3方向に白い糸の束が生えてます。ホンマ、どんなけオモロー!やねん!!(この虫調べてみるとハゴロモ類の仲間の幼虫でした。上の種とはまた別の可能性もあります。)

ぎゃーぎゃー言ってると、いつの間にか夜の12時を回っています。3人、ええ歳こいて、タイムスリップしてもーてます...。完全に少年の心を取り戻しています。

今回発見するには至らなかったのですが、実はパラオにもクワガタムシがいるそうです(聞いた話しやけど)。あとめっちゃ綺麗なオレンジ色の蛾ぁと、人間の腕ぐらいあるナナフシ(ほんまかいな!)。...まだまだ新しい発見がそこにあります。真っ暗なジャングルで、オモロー!なクリーチャーに出会う夜。

それってなんか、素敵やん?

 

三澤 俊和

白石 拓己(しらいし たくみ)  
パラオ人に本当の名前覚えられてへんけど、「ブルース・リー」言うたら「あぁ、あいつか」ってなるぐらい、『ブルース・リー』で通ってます。ウェットスーツも死亡遊戯仕様ですわ。最近は暇になったら泥地ばっかり潜ってまっさかい、『燃えよドラゴン』ちゅうよりは『萌えよ泥ゴン』ちゅう感じですわ。押忍!サザンマリンダイバーズ勤務。

 

 

vol.64 パラオの川

忍! 最近よ?言われるんですけど、サングラス掛けて喋らへんかったら『男前』入ってるそうですわ。...一応言うとっけど、それ全然うれしないで。白石です。

 

今回の『PALAU×PALAU』は川です。淡水ですわ。『パラオの川』はあまり人が入っていなくて、まだまだ未知の生物が沢山居てまっさかい、ごっつ興味惹かれますわ。しかしあまり人が入らないと言うのには、きちんとした理由があったんです。今回の『PALAU×PALAU』では、『ワニとの遭遇』について書き綴りたいと思います。ほんまパラオの川だきゃ、いろんな意味で“ひかれ”まっせぇ???。

炎天下の中、陽炎立ち昇るバベルダオブの道を、窓を全開にした俺のバンが走っていきます。小川を見つけてはストップし、がに股で土手を下る。目の前にある水溜りにスノーケルを付けた忍び足が入り、静かに顔をつける。「おもろいがな。」おもたら、タンクを担いで頭を沈める。それを繰り返しては、バベルダオブの道を少しずつ進んで行きます。はい、I am 不審者です。曲者です。

小川のほとんどは、幅1m水深はせいぜい腰ぐらいなものです。少し足を踏み入れれば、水面はジャングルで覆われ、日光はほぼ遮られます。微かに漏れる木漏れ日が水面をゆらゆらさせ、水の音がちょろちょろ聴こえてきます。まぶたを閉じれば、そこは完全に癒し空間です。How 風流 this is!

水中に潜るとまた違った風景が広がっています。水底には流木が横たわり、川の両脇は植物の茎や葉っぱが堆積しています。水草が流れに身を任せてゆらゆらし、その流れに向かってオオクチユゴイがホバリングしています。また、水面にはテッポウウオがすました顔して、泳ぎ回っています。植物から出ただろう有機物が絶えず流れるので透明度は低く、サーモクラインのフニャフニャがさらに追い討ちを掛けて視界を悪化させます。Yes! This is 淡水! って感じです。

トリップを続けるうちに、マルキョク州の川までやって来ました。ジャングルの感じ、透明度、川の規模を見て「エエ写真撮れそうやなぁ?。」思てウキウキしながら入りましたわ。潜ってパっと見た感じで、『ゴシキタメトモハゼ』はおるし、『クロホシマンジュウダイの幼魚』もおるし、『ゴマフエダイの幼魚』もおって、なんやこの川、ごっつ美味しそうな匂いがしますわ。テンション上がってもーて、心臓バクバクいうてますわ。ドンドン奥へ入ると腰ぐらいの水深から急に深い淵になり、透明度はバリ悪いですわ。しゃーないから秘密兵器のダークバスター(ごっつ眩しいライト。)照らしながら魚探してたら、次の瞬間。 
「ッ!!!!!!!!!!!!!」 
戦慄が走りましたわ。 
「おるやんけっ!!!」 
アリゲーター、たまげーたーやで。 まぁぶっちゃけ、クロコダイルやねんけど。

透明度は1m、水深は2mぐらいですわ。残念ながら自分の足は見えへんぐらいに、Bad condition ですわ。水面はやはり大木やら葉っぱで陰になってて、その下のノッチみたいに窪んだ地形のとこにペタっと尻尾が張り付いてたんですわ。大体こういうトコ潜るときは、どうしてもワニのこと意識してる訳で、椰子の葉っぱとか見掛けただけで「あれワニかなぁ?」ってビビリながら疑うことは今まで何度もありましたわ。でも今回のは疑いとかちゃいますわ。確信ですわ。

誰が見ても、この尻尾は完全にワニの“それ”でしたから。「ガチガチガチィ!」なったで。水に入って寒さでガチガチになることは何べんもあったけど、恐怖でガチガチ言うたんは今回が初めてですわ。アカン、パラオの川ごっつ怖いで。

初めは尻尾だけ見て完全に「ワニやぁ!」って理解出来たから、バタバタっと逃げたんですわ。そーーーっと逃げなアカンと思てんねんけど、無理ですわそんなもん。もう頭の中がバタバタしてますから。アホの坂田みたいになってたで。『ほうほうの体』っちゅうやつですわ。それでいっぺん足首ぐらいの水深のとこまで逃げて来て、スーッと深呼吸しましたわ...。

アホですねぇ俺も。何でやろ?写真撮りに戻りましたからねぇ。理由あれへんけど、「いけるんちゃう?」みたいな。全然理由なんかあらへんねんで。度胸とかちゃいますわ。完全にアホですわ。また困ったことに頭の中に掛かってたBGM、『燃えよドラゴン』やったからなぁ。やる気満々ですわ、このおっさん。

闘志ギラギラで戻りましたがな。恐怖の淵へ。ええ気しまへんでぇ?。同じ湯船に凶悪なモンスターが浸かってるんやから。「銭湯で刺青のオッサンと一緒になった。」とか、そんなレベルちゃうからねぇ。好奇心旺盛なアメリカの学生が『ジョン・ウェイン・ゲーシー(少年を主に狙ったホモ野郎の殺人犯。)』と1つの部屋になった時の恐怖を後に語ってますけど、そんな感じちゃいますかぁ。運命を完全に向こう側に握られてるのが分かりましたわ。

素潜りでしたさかい、スーッと息を吸い込んで“彼”の元へ沈み込みますわ。ダークバスターの明かりが、サーモクライン(水温の違う水が混ざったときに出来るモヤ。)のモヤモヤの中を妖しく照らしてます。如何せん透明度が悪くてその先は何も見えへんのですが、そこに“おる”ことが分かってるだけに、ごっつ気持ち悪いですわ。刺激せぇへんようにゆ?くり奥へ入っていくと、そこに確かに鈍く光る黒い体が見えてきます。禍々しい鎧の様な皮膚が見えてきて、それをなぞる様に明かりを滑らせていくと、根元まで裂けた下品な口元が現れます。「うわぁ?、やっぱりワニやぁ??。」2mぐらいありますわ。めっさ怖いですわ。言うとっけど、生きてるワニやで。しかしドキドキしてる俺とは裏腹に、こいつで?んと構えてけつかってますわ。「にいさん、貫禄やなぁ?。」って感じやで。 


もう取り敢えずシャッター切りまくりです。せやけど透明度悪いから、遠いところから切っても全然写らへん。出来るだけ近寄って撮ろうとしますけど、「ピクっ!」て動かれるだけで、こっちは「ワーっ!」ってなりますわ。「噛むんやったらカメラまでにしてぇ!」って感じやで。顔を背けて、腕突き出して「カメラまでにしてぇ!」って感じやで。ど?しても目に掛かる枝が邪魔で、「これ取り除いたらエエ写真撮れるんやろなぁ?!!」思たけど、無理でしたわ。枝に手ぇ伸ばしたら、「ピクっ!」って威嚇してきはりますから。危ないっちゅうもんちゃうで。なんぼイケイケの俺も、流石にこれ以上はアカンかったですわ。向こうも完全にピリピリ来てるのが伝わってきてましたから...。

噛みに来るか来ぇへんかの臨界点辺りで何枚か撮ってて(レンズからの距離で言うたら、30cmぐらいですわ。)、この顔の写真撮れたところで俺の緊張の糸がぷっつり切れましたわ。 
別に勝った訳やあらへんねんけど、「撮ったどぉ???!」言うて吼えてましたわ。仰向けになって流れに身を任せて浅瀬まで帰還したのですが、その時真っ青な空に昇華していくアドレナリンがやけに清々しかったの覚えてますわ。そして、初めの“震え”とは違う、別の“震え”が俺の体に起きてましたわ...。

ってカッコつけて締めくくってる場合やあらへん。パラオの川、いてまっせ!専門家に聞くところによると、クロコダイルは全長2m50cm超えたら、大人の人間を襲うそうです。ほんでまたクロコダイルは自分の体重の70%ぐらいの重量のものを一回の食事でいわしてしまうそうでっせ。俺みたいな頭の悪い人はおらへんと思いますけど、一応言う義務あると思いますので言うときます。「パラオの川、迂闊に入らんほうが身のためです!!」Caution です。
押忍!

 

白石 拓巳

白石 拓巳(しらいし たくみ)
パラオ人に本当の名前覚えられてへんけど、「ブルース・リー」言うたら「あぁ、あいつか」ってなるぐらい、『ブルース・リー』で通ってます。ウェットスーツも死亡遊戯仕様ですわ。最近は暇になったら泥地ばっかり潜ってまっさかい、『燃えよドラゴン』ちゅうよりは『萌えよ泥ゴン』ちゅう感じですわ。押忍!サザンマリンダイバーズ勤務。

 

vol.35 『ボルネオハゼ』について

忍!サザンマリンダイバーズでガイドしてます、白石です。

ガイド始めてそろそろ2年が経とうとしてますけど、下が入ってけぇへんさかい、未だに下っ端ですわ。頭使わんと日々走り回ってまっさかい、体だけはムキムキでっせ。あとヌンチャク振るのが上手いさかい、パラオ人からは『Bruce Lee』いうて呼ばれてますわ。

今回、『ボルネオハゼ』というマングローブ域に生息する珍しいハゼの写真撮影に成功しました。マングローブ域は泥々で透明度も悪く写真撮影は困難を極めるのですが、逆にまだまだ未開拓なエリアですので、新種を見つける可能性なども十分に含んだ魅力的なエリアでもあります。

そんなマングローブの中に一人タンクを背負って入り、泥どろになりながら身を潜め、『ボルネオハゼ』と闘った男の記録をここに書き綴りたいと思います。

しかし『パラオ×パラオ』やのに、「ボルネオて...。」みたいな。まぁその辺の野暮ったさに、俺と言う人間性を感じて頂けたらと思いますわ。どうぞ一つ宜しくお願い致します。押忍!

この魚、日本にいる時から『日本のハゼ』(平凡社から出てる図鑑)では見たことがあったのですが、『サツキハゼ属』の中でも色が多く、飛び抜けて綺麗です。『サツキハゼ属』のハゼは繊細なイメージがあるのですが、そのイメージをぶち壊す華やかさが、このハゼにはあるのです。にもかかわらず生息場所はマングローブの泥ドロ域というギャップ。しかも名前は『ボルネオハゼ』。

海外に出たことのなかった俺の心を鷲づかみにするだけの材料は、既に十分に備わってますわ。付け加えると、この図鑑のボルネオハゼ、妥協のない仕事をすることで有名な矢野さんが撮った写真にも関わらず、ごっつ画像が荒いんです。この辺からもマングローブ域の透明度の悪さ、写真を撮る際の困難さを窺い知ることが出来ます。その分「ええ写真撮ったろ!」思て、ごっつ燃えたりもするんですけど。

パラオに来て、初めは「マングローブ潜ればすぐに会えるやろう。」って軽ぅ考えてたんですけど、なかなか会えません。マングローブ潜るたびに中層を探すんですけど、他のサツキハゼには出会ってもこいつには全然出会えません。「おれへんもんやねぇ??」思てたら、意外な形で最近やっと出会えたんですわ。

写真撮ってたのに恥ずかしい話し、すぐに『ボルネオハゼ』って気付かへんかったんです。撮った写真はヒレ閉じてましたさかい、矢野さんのヒレ全開のと比べても全然違うハゼと勘違いしてて、「なんちゅうサツキハゼやろうなぁ??」思て暫く放置してたんですわ。暫くしてうちの治郎さんに「このサツキハゼなにもんですかねぇ?」って尋ねると、「おっボルネオじゃん!」やて...。

頭真っ白になりましたわ。場所は言われへんけど、うちのボートオペレーター(アレンさん)の家の前ですわ。って言うてるやんいう話しや。衝撃でしたわ、ほんま。

「えぇ????!これ、ボルネオぉ?!?でも、アレンさんち前やで!?確かにマングローブに囲まれてるけど。でも、えぇ???!家の前て...えぇ???!!!」ほとんどパニックでしたわ。それからアレンさんち通いが始まったんですわ。

こいつの写真を狙うなら、出来るだけ透明度の良い上げ潮のときです。満月とか新月の潮の大きい時期やったら、よりベターです。あと気ぃ付けなアカンのはワニの存在です。パラオにはクロコダイルが居てまっさかい、マングローブ選び誤ったら『死亡遊戯』必至でっせ。

マングローブに頭突っ込んで、いざ写真撮影開始です。自分は常に『矢野越え』(※1)目指してシャッター切ってまっさかい、出来るだけ綺麗な雄のヒレ全開を狙いますわ。ところがこの『サツキハゼ属』ちゅうのは、普段はホンマにヒレ開きません。さっきも言いましたけど、ヒレ開かへんかったらこんなもんただの『チリメンジャコ』ですわ。

マングローブに頭突っ込んでひたすら待ちます。はたから見たら『流れてきたドザエモンが引っかかってる。』みたいですわ。巻き上げた泥がゆ?くり沈殿してくると、普段あまり見る機会のない魚が現れて気ぃ取られたりします。「おっフタスジノボリハゼやんけ。」「おっヒトミハゼやんけ。」って油断してたら、「ぱっ!」とヒレ開きよるんですわ。「あぁ?っ!」思たら、もう後の祭りですわ。あざ笑うかのように、一瞬ですわ一瞬。 a moment ですわ。ホンマ憎たらしいやっちゃで。

気合い入れ直して再びマングローブに頭突っ込みます。気ぃ付いたら2時間ぐらい経過してます。集中してるから時間経つのん早い早い。じぃ???っと観察してると、だんだんとヒレ開く瞬間が見えてきます。それが雄への威嚇であったり、雌への求愛であったりする訳ですけど、要は違う個体にちょっかい出す時がポイントですわ。つまり狙った個体が違う個体に必要以上に接近した時、または近づいて来られた時がチャンスです。ホンマ一瞬だけですけど、腹ビレを「タカタカタカ!」と振ると同時に第一背ビレも「バッサー!」開きよるんですわ。

ファインダー越しにじ?っと待ってて「タカタカタカ!」なったら、「今やぁ???!!!」てな具合ですわ。テンション上がりまくりやで。マングローブに頭突っ込んで「エロいなぁ?!うわぁ?!エロいなぁっ!」言いながらシャッター切りまくりですわ。変態やでホンマ。親見たら泣くでいう話しや。何とか撮れた時は Dr. レオンちゃうけど「時空を捉えました...コンプリート...。」言うてましたわ。

まぁ見たって下さい。この尻ビレと尾ビレに入る、緑とピンクの怪しい色合い。あと第1、第2背ビレに入る、赤いスポット。ごっつ雅らかですわ。これぞ俺が捜し求めてた『ボルネオハゼ』ですわ。(「こんなもん探してたん?」って言わんといて...。傷付くから言わんといて...。)

しかしこの写真、上半身白飛びしてますし塵はいっぱい写り込んでますし、まだあきませんわ。残念やけど、まだ『矢野越え』には至ってませんわ。こんなこと言うてたら終わりないんやろうけど、まだ暫く泥の中に頭突っ込む日々が続きそうです。簡単に満足させてくれへん辺り、ほんま楽しいですわ。

冒頭でも述べましたけど、マングローブ域はまだまだ未開拓なエリアですので、ごっつ面白いですわ。潜るたびにけったいな魚見てますし、簡単には掘りつくせない奥の深さがあります。俺にはまだ『ハゴロモハゼ』の発見ちゅう目標も残ってますし、ごっつロマン溢れ倒してるで。しかしクリアブルーの爽やかさは、いっこもあらへんけど!

※1『矢野越え』:『日本のハゼ(平凡社)』の矢野さんの撮った写真より、よりヒレの開いたより綺麗な色の写真を撮ること。



伊井淳教

白石 拓巳君(しらいし たくみ)
パラオ人に本当の名前覚えられてへんけど、「ブルース・リー」言うたら「あぁ、あいつか」ってなるぐらい、『ブルース・リー』で通ってます。ウェットスーツも死亡遊戯仕様ですわ。最近は暇になったら泥地ばっかり潜ってまっさかい、『燃えよドラゴン』ちゅうよりは『萌えよ泥ゴン』ちゅう感じですわ。押忍! サザンマリンダイバーズ勤務。