オリジナルコラム
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執筆者: 伊藤 藍子
vol.129 イタボリ
12901.jpgパラオで有名なストーリーボード。パラオ語ではイタボリといいます。なんだか聞き覚えのある名前ですが、このイタボリ、日本語の板彫りに由来し、意味もそのまま板を彫ったもの。パラオの神話・伝説を一枚の板に描き全て手彫りで2層・3層と重ねて彫っていったパラオの工芸品です。英語ではstory board(お話の板)と呼ばれ、お土産として大変有名です。
隊員時代、小学校教諭だった私は一目見てこのイタボリに大いなる興味を示しました。どういう風に彫ったらこんな素敵な作品ができるのだろうと興味津々。そんな中、縁あってイタボリ製作所Tebangにてイタボリを教えてもらうことになりました。
イタボリ実習生は私を含め4人。緊張気味に、イタボリ実習初日を迎えました。まず始めは板と缶を渡され、みんなポカン??重ならないようにたくさんの円を板に描きなさいとのこと。ひたすら板いっぱいに円を描きました。続いて、円のふちを三角刀で彫ります。これが結構難しく、なかなか綺麗な円ができません。全て終わると、今度は丸刀で円の周りを全て一層彫り下げていきます。彫り下がった部分にさらにまた円を描き、円のふちを三角刀で彫り、その周りをまた一層彫り下げの繰り返し。こんな説明でイメージが湧きますでしょうか?これがイタボリの基本なのです。
12903.jpgさて、次は本番。Tebangのボス、リンに絵を描いてもらいゲムリス島の亀のお話を板に彫ることになりました。Tebangの作品は全て、ボスのリンが絵を描いており、線が柔らかく丸みを帯びているため人の豊満さがとてもよく伝わり、パラオでも人気の作品です。最近ではTebangだけではなく、GiftShop RURやDutyFreeShopでも販売しています。
本番となるとやや緊張気味の私。おそるおそる板を彫り始めると、周りのスタッフから「ダイジョーブ、ダイジョーブ。」最初は大きく大胆に彫っていって、後から細かく仕上げていくんだよと声をかけられ一安心。まずメインとなる亀・人を彫り、その周りを一層彫り下げていきます。彫り下がった部分にさらにアバイやココナッツ、ロックアイランドなどを描いてもらい、それを彫ります。またその周りを一層彫り下げ今度は海、月、空と彫っていきます。大体彫り終わると、丸刀で角を丸くし、やすりをかけ全体を柔らかく仕上げていきます。続いて、人の顔や船、アバイやココナッツなどの細部を彫っていきます。最後にまたやすりをかけ、絵の具やマジック、石灰、靴墨などで色をつけていきます。毎週末Tebangに通い、少しずつ、少しずつMy Story Boardを仕上げていきました。
一枚の板を完成させるためにかなりの手間隙がかかっています。よくどれくらいの時間がかかるの?と聞かれますが、小さいものだと2日・3日でできますし、大きいものだと数週間かかることもあります。また板にはマホガニ、ウカル、ブタッエス、ラス、アビブの根っこ、立体用にはドートとパラオで採れる堅い木が使われています。また、一枚一枚手作りなので、同じように見えて、一枚として同じものがありません。
12902.jpg数週間かけて一枚の板を完成させた私は、すっかり板彫りの魅力にとりつかれ、インターネットで彫刻等を揃え、今では一つの趣味となりました。
同じお話でも、絵を描く人、彫る人によってまったく雰囲気の違うイタボリは、色のいた物、貝をはめ込んだ物、シンプルな物、立体的な物、箱になっている物、マンタや亀の形をした物と色も形も様々。たくさんのイタボリを見て、ピーンと心に響くものがあったら、是非パラオの思い出に一枚購入されてみてはいかがでしょう?
(記:09/10/01)

伊藤藍子

伊藤 藍子(イトウ アイコ)
元青年海外協力隊パラオ隊員。すっかり気に入ったパラオの良さをたくさんの方々に知ってもらおうと現在パラオの旅行会社ベラウツアーに働く。

vol.86 青年海外協力隊@パラオ

 

004年12月から2年間、青年海外協力隊の小学校教諭として、名前も知らなかった南の国パラオに派遣されました。派遣前には3ヶ月ほどの訓練があり、同時期に派遣されるいろいろな国へ行く、様々な職種の人と一緒に共同生活をしながら訓練を受けます。パラオ語や任地の事を学ぶのも重要な訓練の一つ。パラオ語のカセットテープを聞きながらパラオ語の練習をし、パラオについての本を読んではみたもののいまいちどのような島か想像できませんでした。

百聞は一見にしかず・・・当たり前のようですが、パラオについてのレポートまで作成したにも関わらず、実際パラオに来て分かることばかり。大変小さく一つの家族のような国、住んでいけば行くほどに愛着がわき、この島の魅力に魅せられていきます。「ダイジョウブ」を始め、デンキ、デンワ、センプウキ、ハラウ、タタム・・・などなど、たくさんの日本語が通じ、料理には塩、胡椒、醤油、味の素を使います。年配の方を敬い、家の手伝いをし、人の前を横切るときは頭を下げ、なんだか昔の日本を思わせます。そこへ南国の、のどかな雰囲気や周りの人を受け入れるオープンな雰囲気が混じりあい、パラオの魅力を発しています。


さて、私の派遣された小学校は海の目の前。子どもたちが、元気にのびのびと学校生活を送っています。パラオの小学校は日本と違い8年制。その後、高校へ4年通います。面白いのは、毎日時間割が同じこと。1時間目が算数であれば、毎日、1年間、1時間目は算数なのです。そして、夏休みは5月下旬から8月中旬までの約3ヶ月間。夏休み明けから新年度が始まるのですが、長い、長い夏休みのおかげで、今まで学んできたことを見事に忘れてきてしまう事も多々。でも、そんなことにめげず子どもたちはがんばります。先生の質問に「Yes! Teacher!! Nga(=me)! Nga(=me)!」と元気よく発表をします。指名すると、たまに「I forgot(=忘れた)!!」・・・なんて事もありますが、でもその気持ちが大切と子どもたちの元気な「Nga(=me)! Nga(=me)!」に、こちらのやる気も倍増。お昼休みには、目をキラキラさせて学年を越え、ゴム跳びや竹のバットでヤキュウを楽しんでいます。パラオなのに、アメリカの教科書を使用していたり、パラオ語が母語なのに、英語で授業をしていたりと、問題はまだまだたくさんありますが、素直に学ぶことを楽しんでいる子どもたちを見ると、こちらも負けてられないと気合が入ります。様々なことを思いながら、たくさんの葛藤をし、どうしたら子どもたちの学力が伸びるのかいつも考えて授業をしてきた2年間、忘れられない充実した日々となりました。

パラオ協力隊のもう一つの特徴は、2年間ホームステイということ。パラオ人の家庭でパラオ人と過ごす毎日は、隊員生活をどっぷりとパラオ生活へ導いてくれます。日本家庭との違いをあげればきりがないけれど、シャワーは水、毎日朝・晩の一日2回。ご飯は食べたいときに食べる。タロイモやタピオカ、魚、チキンを使った料理が多く、たまに亀・サメやコウモリなどパラオ珍味が食卓にあがる事も。少しでもやせると、もっと食べろ、食べろと心配され、誰々の家に住んでいると言えば、Oh-My Familyと勝手に家族にされちゃいます。近所は親戚・気心の知れた人ばかりなので、家の鍵はかけずに外出。家にポストはなく、郵便局の私書箱に取りに行く。洗濯はコインランドリーへ井戸端会議がてら出かけます。タクシーに乗っても、場所ではなく誰々の家で通じるところがパラオらしい。犬と鶏は放し飼い。その辺に野良か飼われているのか分からない犬や鶏がゴロゴロ。ホストファミリーと一緒に寝ていたら、寝返りをうたれ、うっ!!息ができないなんてこともありながら、ホームステイならではの体験をたくさんし、パラオに貴重な第二の家族ができました。

パラオで隊員なんてうらやましいと思われる方!確かに時間もあるし、よい所も、悪い所も含めパラオらしさを満喫するには協力隊が一番かも。興味のある方は是非挑戦されてみては・・・。ただし、派遣国は選べませんのであしからず・・・。 

 

 

 

 

 

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伊藤 藍子(イトウ アイコ)
元青年海外協力隊パラオ隊員。すっかり気に入ったパラオの良さをたくさんの方々に知ってもらおうと現在パラオの旅行会社ベラウツアーに働く。

 

vol.62 わたしのパラオ

ラオには、たくさんたくさんのリピーターがいます。何十年も前からパラオに遊びに来られている方、一年のうちに何度も遊びにいらっしゃっている方。毎年、一年に一度はとパラオと遊びにいらっしゃる方。一番多いのは、やっぱりダイバーのリピーターさん。でも、最近では観光で来られるリピーターさんも増えてきて、旅行で来たことがきっかけで、パラオで働き始めた人や、仕事で来ていて、また違う形で帰って来た方も多々。そんな多くの人を虜にしてしまうパラオの魅力とは一体何なのでしょうか?

 

実は私も、れっきとしたパラオリピーターの一人。青年海外協力隊の小学校教諭として、名前も知らなかったパラオに派遣され2年間、パラオの人たちとともに暮らし、パラオ生活を送ってきました。派遣先を海の見える所にと希望したら、周りを海で囲まれたパラオに、そして海が目の前の小学校、さらにホームステイ先も学校から1分と海の見える場所。希望どおりの環境で、のーんびり、ゆっくり、パラオの子どもたちに算数や体育を教えてきました。文化、考え、生活習慣の違いに驚き戸惑い、奮闘の毎日だったけれど、2年もいればパラオの生活にも慣れ・・・今ではすっかり心も体もパラオ人!?

この2年のパラオ生活が私の価値観や心の持ちようを大きく変えました。怒られても、怒られてもめげずに、次の瞬間には笑顔を見せる子どもたち。彼らは思った事、感じた事をそのまま全身で表現します。シャイだけれど、いつも笑顔で、周りを受け入れる大きな心を持っています。そんな子どもたちとの触れ合いは、いつも私のパワーの源でした。そして、よその国から来た、文化も言葉も違う私を家族の一員として迎えてくれたホストファミリーは、影ながら私のすることを見守り、応援してくれていました。同僚、地域の人、パラオで出会う多くの人々から(日本人も含め)、助けられていました。パラオはそんな温かい心を持った人がたくさんいるのです。そして、そんな人々と接していると、いつのまにか私の心までぽかぽか温かくなってくるのです。

ぽかぽか陽気に、ぽかぽか心が集まったパラオ。のんびりとゆっくりとした時間が流れているパラオにまた戻りたくなり、現在は、パラオの旅行会社で働いています。仕事をしている時は忙しくて、パラオの良さをついつい忘れてしまいがちですが、たまの休日、ダイビングをしに海にでたり、町をふらふら、行き先々で出会った人と話しをして、家で夕日見ながらのんびり過ごしたりしていると、やっぱりパラオっていいなーと満たされた気持ちになってきます。たくさんの青を持つ海や、緑豊な自然、そしてパラオの人々と、パラオリピーターがパラオに帰ってきたくなる理由はそれそれだけれど、心を温かくする何かを求めて、また戻ってきたくなるんだなー、あ~パラオ。



伊藤 藍子

伊藤 藍子(イトウ アイコ)

元青年海外協力隊パラオ隊員。すっかり気に入ったパラオの良さをたくさんの方々に知ってもらおうと現在パラオの旅行会社ベラウツアーに働く。