オリジナルコラム
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執筆者: 坂上 治郎
vol.74 渓流の主役たち

 

パラオ」と言えばまず思い出すのが青い海、白い砂浜、美しいサンゴ礁、そして不思議な空間をかもし出すぽっこりお山のロックアイランド。そして、その素晴らしい海で楽しむダイビングやスノーケリングは余りにも有名。大物狙いのフィッシングやシーカヤックもアクティビティの一つとして外せない。パラオは本当に素晴らしい「世界一」の海を持った国と言っても過言ではないと思う。「世界一」と、言えばパラオが本当に世界一なことが一つあるのをご存知だろうか? 実は世界中の都市の中で、首都コロールの年間降雨量が世界一にランクインされたことがあるレベルなのだ。そう、非常に雨の多い、真水が豊富な国なのである。通常狭い島国といえば水不足がお決まりで断水や給水制限なんてことは普通。しかしパラオは水をジャージャー出しっぱなしで洗車なんて光景を良く見かける。その行為が良いかどうかは別として、水に困らない島国なのだ。一般家庭の水道代なんて日本よりも安く一月$5もしないのである。そして、雨が多いということは当然川が多く、滝も多く存在している。パラオに訪れたことのある方は「ガラスマオの滝ツアー」に参加された人もいるのではないだろうか。こんな狭い島で流程も短いこの国にこんな立派な滝が!?と、その意外なスケールに誰もが驚き、癒される美しい滝なのである。この川は一年を通して水が枯れることも無く、実際に滝を見てみると常時この水量を保てるなんて!と、本当に真水が豊富な国と実感させられる。そして真水が多いということは淡水域が多いということ。つまりこんな絶海の孤島のような場所なのにパラオには淡水魚が多数生息しているのだ。

そんなわけで、今回はこのパラオ×パラオの誌面を借りて前述したガラスマオの滝周辺で見られる渓流の主役たちを紹介したいと思う。

まず渓流の縁に立って滝つぼを見下ろすと20?30cmくらいの魚が泳いでいるのがすぐに分かる。

 





この魚は「オオクチユゴイ」という魚であり非常に好奇心の強い魚。滝壺にドボンと飛び込んでも平気で我々の周りを泳ぎ回る肝の据わった魚である。裸で泳いでいると思わぬ場所を咬み付かれ驚くことも。

 

 

 



次に目立つのがボウズハゼの仲間で「ナンヨウボウズハゼ」や、

 

 

 






「フデハゼ」等の美しいハゼの仲間が観察出来る。

 

 

 






個体数は少ないが「ルリボウズハゼ」も見られる。この魚は水底の岩や砂利に生えたコケ(藻類)をせっせと食べている姿を見ることが出来る。喧嘩や求愛時に時折見せる婚姻色は非常に美しく、まさに渓流の宝石と称えるに相応しい魚達だ。
 

 

 




流れの余り速くない、どちらかというと淵のようなところで見られるライギョのような風貌のゴシキタメトモハゼ。本種は見ての通りのフィッシュイーターで、ルアーにもヒットするような巨大で美しいハゼの仲間。 

 

 

 




そして、ラッキーだと見られる「オオウナギ」。我等が通常食べるウナギより遥かに大きいウナギ。色も茶色く体も扁平した感じでちょっと不気味? おー!ウナギ?♪なんて不用意に手を出すと咬まれることもあるので一応注意も必要。で、味の方は...ま、パラオ人は「ベリーオイシイ?♪」とは言うが... でも一般的に市場に出回ることはない。

 

 


そして魚ではないが、「よくまあ、そんな場所で生活していますねえ...」と、思ってしまうような滝の急流で見られる「ツノナシモエビ」もその生態が非常に興味深いので探してみて欲しい。
上記が一般的に確認しやすい淡水魚なので、せっかく滝ツアーに参加するなら是非マスクを持参して水の中も覗いてもらいたい。そこにはダイバーすら目にすることのない魚達が生き生きと泳いでいるはずだ。ただパラオに生息する淡水魚達はいわゆる純淡水魚ではなく、その生活史の中で一度は必ず海で生活する魚達で、純淡水魚はプラティ(胎生メダカの一種)などの外来種しか確認出来ていない。是非オリジナルの純淡水魚を見つけたいものであるが、今のところ確認出来てはいない。もし、パラオで見慣れない淡水魚を見かけた時は是非とも教えて欲しい。

ここでは紹介しきれないが、パラオの川には上記の他にも色々な淡水魚が見られ、中には非常に美しい「カキイロヒメボウズハゼ」や世界一大きいハゼなどと紹介される「ホシマダラハゼ」なども生息しているようだ。しかし、パラオの淡水魚達も我が国の淡水魚と同様に開発の影響にさらされている。前者のカキイロヒメボウズハゼなどは数年前からその姿を消してしまい幻の魚となってしまった。サンゴを守るという概念は欧米指導の元、世界的に広まってきており、パラオ人も盲目的ではあるがサンゴを守らねばという意識が近頃は芽生えていているようである。しかし、陸水域の重要性は殆ど認識していないようで、開発工事による土砂の流出に対する環境破壊への危機感はない。我々先進国が犯した過ちを教訓にしたいところだがそういった指導が出来ていないのが実情だ。恐らくパラオの淡水魚を守ることがパラオの自然環境を守ることに違いない。ガラスマオの滝を訪れる時はそんなことも考えながらこれらの美しい魚たちを見てやって欲しい。

 

 

 

 

 

坂上治郎 (さかうえ じろう)
1967年生まれ。東京都出身。北里大学大学院水産学研究科修士課程修了。水産学修士。専門は熱帯域における魚類生態学で主としてハゼとテッポウエビの共生関係の解明を目的としたフィールド研究を行っている。サザンマリンラボラトリー代表。
URL;http://www.sml-palau.com/

 

 

vol.30 皆さんイカはお好きですか?

なんてデカいエンジンだ!!!

カ刺...

イカそうめん...

 


イカの沖漬け...

 


考えただけでもよだれが出てきます。


皆さんイカはお好きですか?自分は無類のイカ好き。
「パラオみたいな南国に住んでいたらイカの刺身が恋しくなるのでしょうねえ」なんて声が聞こえてきそうですが...。


そう、実はここ南国パラオでも美味しいイカが食べられるのです♪それはどんなイカかと申しますと、一般的に南国ではコブシメというコウイカの仲間である大型のイカが有名で、ダイビングネタとしても人気の高いイカがいます。(写真右がコブシメ)勿論コブシメも美味しいイカには変わりはないのですが今回は「アオリイカ」という、バショウイカとも呼ばれている本邦は本州でも普通に見られるイカを紹介したいと思います。

 

 

(写真上がアオリイカ)では、このイカはパラオの何処にいるのか?というと主な生息域は内湾。いわゆるロックアイランドの中。なので通常のダイビングやスノーケリングでは余り見られることはありません。でも内湾を潜ったことのあるダイバーの方は水面近くで見たこともあるのではないでしょうか。ブイなどが設置されているポイントのそのブイの下に数匹固まって泳いでいることがあります。ただパラオで見られるアオリイカは本邦で見られるそれに比べると随分と小型ではあります。しかし、味は絶品!刺身にして良し、ソテーにして良し、焼きイカにしても良し!イカの炊き込みご飯なんか最高です?♪ではこのイカをどうやったら入手出来るかというと、現地のフィッシュマーケットなどでは手に入りません。(もしたまたま売っていても絶対刺身で食べてはいけません!)勿論スーパーで売っている冷凍イカはパラオ産ではありません。では、どうやって?そう、自分で捕まえるしかないのです。捕まえる!?でも簡易な竿と餌木があれば誰でも簡単に釣れてしまいます。(勿論フィッシングパーミットは必要)





餌木は日本の釣具店でも手に入りますが、パラオの釣具店や釣具コーナーでも手に入ります。道具が揃ったらロックアイランド内のイカのいそうな場所に行きぽちゃんと餌木を投げ入れます。ラインを手繰り寄せるとイカがすうーっと追いかけて来るのが見えます。ボートの下まで来たらしめたもの!殆ど向こう合わせで入れ食いです。釣れたてをそのままぷりっと剥いてボート上で食べるのも最高♪しかし、アニサキスなどの寄生虫がいるかもしれませんので一応台所でしっかり洗いながら調理したほうが無難ですね。日本のすし屋で食べられるイカにも引けを取らないパラオの甘?いアオリイカ!採れたてのプリプリがたまりません。チャンスがあったら是非ご賞味あれ。ダイビングの帰りにイカがですか?










 

伊井淳教坂上治郎 (さかうえ じろう)
1967年生まれ。東京都出身。北里大学大学院水産学研究科修士課程修了。水産学修士。専門は熱帯域における魚類生態学で主としてハゼとテッポウエビの共生関係の解明を目的としたフィールド研究を行っている。サザンマリンダイバーズ所属のガイドでもある。
URL; http://www1.neweb.ne.jp/wb/smd/
 

vol.4 パラオの海


パラオのロックアイランド

サンゴ礁でスノーケリング

魚と戯れるダイバー

海草場

発達したマングローブ域

れを読んでいる方は既にパラオの海へ訪れたことがありパラオの海に魅せられた人、またこれからパラオの美しい海へ行ってみたいと考えている人だと思います。

 そんな素晴らしいパラオの海ですが、この海がどれだけのポテンシャルを持っているかご存知でしょうか。スノーケリングでもスキューバでも、実際に海に潜ったことのある人ならパラオには魚が非常に多いと感じたのではないでしょうか。
 そう、パラオはミクロネシアの中では群を抜いて魚の多い場所なのです。ではいったいどれだけの魚が生息しているかというと約1400種もの魚が生息しています。ミクロネシアにおける他国で次に多いところでも約500種。グアムやサイパンを含めた北マリアナ諸島全体でも800種以下。パラオの魚種数は圧倒的なのです。いやいや、ちょっと西へ行ったフィリピンや南のインドネシアに比べたらかなり少ないのでは?と思う方もいるでしょう。比較してみると確かにフィリピンやインドネシアなら2500種以上は確認されています。でも、ちょっと考えてみてください。国の面積で言えばフィリピンはパラオの約600倍、インドネシアに至っては3800倍。海岸線の長さで比較したら途方もない差になります。
世界地図上で見たら一目瞭然、パラオは殆ど点。単位面積で考えたら強烈な種数です。では、なぜこんな狭い空間にこれだけの魚種が生息できる素晴らしい海なのでしょう。それはパラオが小さいながらも非常に多様度の高い環境を持っているからなのです。多様度が高いと一口に言っても分かりにくいとは思いますが、つまり外洋、深海、外洋に面するサンゴ礁、中内湾域のサンゴ礁、礁湖、砂浜、閉鎖された内湾、泥地、マングローブ域、河口域、河川、湖、渓流と水域だけでも様々な環境を包括しているのです。これだけの環境があればそれぞれの場所に適応した魚が増えるのは至極当然。また、種数に限らず単純に魚が多いのにも理由があります。パラオは南北と西側に巨大なリーフが発達していますが、その内側や奥にある海草場(アマモ場)と海岸のジャングルであるマングローブ域が発達していることがカギとなっているのです。

 これがなにを意味しているかというと、多くの魚達はこういったエリアを初期生活史の場として利用しているのですが、簡単に言えばパラオの内湾には魚の保育園や幼稚園がたくさんあるということ。また、もう一つの理由として、狭い島国でありながら余り水不足に悩まない豊富な雨も影響していると考えられます。雨が多いということは、河川が発達し島の周囲には汽水域が増えます。汽水域には稚魚の成育の重要なカギとなるプランクトンが発生するのです。すなわち、内湾域に子供(稚魚)の生育場が多く餌が多いということは基礎生産力が高い、ひいては大人(成魚)の数も増えるということなのです。これは魚に限ったことではありません。これだけの多様な環境があれば無脊椎動物の数も当然増えます。パラオの海にワニやジュゴンなどの大型の生物が生息していることもうなずけます。 
 そう、内湾域環境の充実がパラオの魚種と数を増やしていたのです。 
 しかし、最近そんなパラオの海をダメにしていく深刻な問題が発生しているのです。 
沿岸開発による無計画な内湾浅海域の埋め立てやマングローブ域の伐採、開発工事による土砂の流出、そして何も考えない自然環境へのゴミの投機など日本でも問題になっていることがパラオで確実に進行しています。 


海洋生物が付着しない排水が流れる海岸

して最近特に気になるのは都市排水の問題。パラオには一応下水処理場があり皆さんが利用するホテルも含め首都コロールにおいては殆どの民家から下水が集められています。しかし問題なのがこの下水処理場が余り機能していないことと、量が増えるとオーバーフローしてしまい、そのまま海へ流してしまっていることなのです。以前からそのような場所は下水のバイパスとして利用されているため、珊瑚などの付着生物の成育がないとは思っていましたがパラオの海の底力である大きな潮の干満といわゆる干潟の浄化能力によって汚染は緩和されていました。しかし最近では場所によってはいわゆるドブの臭いのような悪臭が海から漂ってきているのです。濁り方や浮遊物も相当増えており内湾環境に与えているダメージは深刻です。
 先にも触れましたが、パラオは狭いながらも非常に多様度の高い環境を持っています。しかし、狭い環境へこれだけのディープインパクトを与えたらその影響は大きいはず。狭いだけに環境破壊は加速度的に進行するでしょう。 
 ある臨界点を超えたら生態系は一気に崩壊するかも知れません。実は既に内湾域から姿を消してしまったサンゴや魚もいるのです。 
 パラオの海を支える内湾域が崩壊したらどういうことになるでしょう。 
 そして一番問題なのはパラオ人自体がこの状況を余り意識していないということ...。 
 ただ、冒頭でも触れたようにパラオの海のポテンシャルは非常に高く、自浄能力も相当であり、なんとか環境は保たれているように見えます。特に外洋近辺ではエルニーニョによるサンゴ礁の壊滅から復活してきているサンゴ礁が目に付くため、一見パラオの海は益々美しくなってきているように感じます。しかし実際には内湾域の汚染は着々と進行しているのです。 
 個々のサンゴを守ったりするのも大切ですが、今パラオの海だけでなく陸上や生活環境を含めたグローバルな状況がどうなっているのかを知り、伝えられるようになることがパラオの海を守り愉しむための第一歩なのではないでしょうか。 

坂上治郎坂上治郎 (さかうえ じろう)
1967年生まれ。東京都出身。北里大学大学院水産学研究科修士課程修了。水産学修士。専門は熱帯域における魚類生態学で主としてハゼとテッポウエビの共生関係の解明を目的としたフィールド研究を行っている。サザンマリンダイバーズ所属のガイドでもある。
URL; http://www1.neweb.ne.jp/wb/smd/