オリジナルコラム
nicedaytour
執筆者: 石浦 龍二
vol.138 すべてが一期一会
 「今目の前にあるシーンは、たえまなく流れていく時間の中の、かけがえのない一瞬なんだと。」そう考えるとすべてのダイビングが楽しいものになっていきます。

13801.jpg パラオでダイビングガイドしていると、海の中にある季節のサイクルというものに色々と気づいてきます。この時期には何が群れ始めるとか、この時期には冷水塊が深場から上がってくるとか(28_〜29_の水温に混じって、時折24_ぐらいのメチャクチャ冷たい冷水塊に遭遇することがあります。昔は冷水塊は非常につらかったのですが、今は肉のヨロイを着ているせいか?何てことありません・・・逆にハンマーヘッドが期待できるのでウェルカムです。)例えばミヤコテングハギの群れも季節物で、乾季の新月前になるとシアスコーナーやブルーコーナーなど色んなポイントで見られるようになります。あとは季節ものでなくても定番ものというものもあります。ブルーコーナーのバラクーダはこの潮だとこの辺りにいるとか。

 ただ毎年見られている、いつも見られているとは言っても、まったく同じシーンということは厳密にはありえないんです。まったく同じ瞬間を味わうということはできないんです。先ほどのミヤコテングハギを例に出しても、その時の天気とか透明度が違ったり、流れの速さが違ったり、群れの規模が違ったり、群れている場所が違ったり。そのミヤコテングハギを狙っているハンターのサメの数が違ったり、または周りにいるダイバーが少なかったりとか、ダイバーが多かったりとか。

13802.jpg ちょっと屁理屈になりますが、見方の違いもあります。余裕を持って少し遠巻きにプカプカ浮かびながらミヤコテングハギの群れとサメの攻防を眺める場合と、興奮して泡をブクブク吐きながら、その群れに360度囲まれるような場合とでは同じ群れを見ても印象はかなり変わってきます。一緒に潜っている仲間が違うと感動の分かち合い方も変わってくると思います。その人が初めてそれを見るのか、あるいは2回目なのか、もしくは何回も見たことがあるのか、などでも心の中での印象は違ってくると思います。1年ぶりに見たのか、5年ぶりに見たのかなどでも主観的な印象は変わってくるだろうと思います。

 と言うわけでクドクドと書いてしまいましたが、(クドくてゴメンナサイ・・・)要するに、同じシーンというのは無いんだということを言いたかった訳です。私が潜って見たシーンというのは、他の人が体験することができない、または将来自分が再び体験することもできない、今現在の自分しか体感することができない、かけがえのないシーンなんだということです。

 そういう気持ちでダイビングをすると1本1本がとても大切なダイビングになります。何かを見ている時も、このシーンは二度と見ることはできないんだと思いながら見ると、その貴重さを感じるし、そのシーンがより楽しく感じられます。そんな気持ちでこれからも毎日ダイビングしていきたいな〜と思っています。

「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。」(BY鴨長明)ということですね。今回はとても仏教的な気分で書いてみました。ダイビングの世界では他の人との競争などは持ち込まず、100%主観で自分のダイビングを楽しんで行きたいし、皆さんにも楽しんで頂きたいな〜と思います。
(記:10/01/17)

石浦龍二

石浦龍二 (いしうら りゅうじ)
2000年からパラオ、「ブルーマーリン」で
ダイビングのガイドをしている。好きな魚はマンタ。趣味は食べること。写真を撮ること。
URL: http://www.meluis.com/

vol.84 常夏なのに厚着をする訳

 

こんにちは。ブルーマーリンというダイブショップでガイドをしている石浦です。僕はよく黄色の長いボートコートを着ています。サングラスをかけてこの暑い南国でボートコートを身にまとっていると、一見すると露出狂か変質者のように見えるかもしれませんが、そんな趣味は持っていないので勘違いしないでくださいね。
 パラオでは1年中気温と水温はほとんど変わらないのですが、体感的には2種類の天気があります。雨が降っているか晴れているかです。晴れていればさすがは常夏!!日差しが肌を刺してきてとても気持ち良いのですが、一度雨が降り始めるとたちまち寒くなります。ボートの上でT-SHRTSが濡れた状態で高速で走って風を受けると「ここはどこ?ホントに南国?」というほど寒いんです。無言で運転しているボートのキャプテンの腕を見るとサブイボがでています。パラオ生まれの彼らでもやっぱり寒いんだと思います。
 僕らはダイビングガイドという仕事をしているため、風邪は大敵です。海に潜るには耳抜きという技が必要です。耳抜きとは海に潜ることで水圧がかかり耳の鼓膜を内側に押してくるので耳が痛くなってきます。その違和感を解消するために鼻をつまんで耳の内側にフンッと空気を送り込んであげて、押されていた鼓膜を内側から押し戻す技です。風邪をひいてしまうと、耳につながる管が詰まったりして耳抜きができなくなってしまうのです。耳抜きができないと痛くて2mも潜れません。お客さんを連れて海に行って、いざ潜ろうという時に「ごめんなさい・・・耳が抜けません・・・」なんて死んでも言えません。ダイブポイントについて耳が抜けいないなんて想像するだけで恐ろしい・・・なのでダイビングガイドは常に耳が抜けるコンディションを保っていなくてはいけないんです。僕は幸い耳が抜けやすい体質らしくて今まで8年間ガイドをしていて耳が抜けなくて仕事ができなかったことは1度もありません。
 先日風邪をひいてしまいました。鼻水が次から次へと止まることを知らず出てきます。やばい・・・耳大丈夫かな?と不安を抱えていましたが、陸上で思いっきり気張るとなんとかキュイ?ンという音と共に抜けました。水中でもこのキュイ?ンという音と共に何とか耳を抜きながらガイドできました。
 翌日は切り札のスダフェッドという薬を飲みました。パラオの薬局で普通に市販されている薬で鼻水やサイナスの痛みを抑えるための薬です。これが強烈な効果で、飲んで数分で鼻水はあっという間に止まり、喉までカラカラに乾いてきました。これで耳抜きもできるぞ!!と思って試しにやってみると昨日よりも抜けずらいんです・・・もしかしたら粘膜が一気に乾燥するので、鼻水がサラサラ状態ではなく粘着質のネットリとした状態になってしまって、逆に耳管をふさいでしまったのかもしれません。「ヤバイ、今日もガイドの数がギリギリなので誰かに変わってもらうこともできないしどうしよう・・・」と思いつつ頑張って耳抜きをしてみました。もう限界というぐらい思いっきり気張っていると耳抜きよりも先にオナラがブッと出てしまいました・・・それでも止めずに気張っていると、あのキュイ?ンという音とともにやっと耳が抜けてくれました。一度抜けるとその後は快調にサクサクと抜けてくれて無事にダイビングもすることができました。
 もうこんな苦労はしたくありません。なので晴れている時でも不意のスコールが降るかも知れないし、少しでも体を温めておきたいという思いもあり、なるべく風邪をひかないように分厚いボートコートを着ています。皆さん変質者では無いので温かい目で見守ってくださいね。

 

 

 

 

石浦龍二

石浦龍二 (いしうら りゅうじ)
2000年からパラオ、「ブルーマーリン」で
ダイビングのガイドをしている。好きな魚はマンタ。趣味は食べること。写真を撮ること。
URL: http://www.meluis.com/

 

vol.41 毎日いい気分

国の強い日差しが大好きです。パラオのもったりとした重い空気も大好きです。

 

 年に1度2週間のバケイション休暇をもらって日本に帰国します。というか、僕の感覚としては日本に帰るっていうよりも日本に旅行に行くっていう方がしっくりときますが。2週間日本で生活した後パラオに戻ってくると、「あ?やっぱりパラオはいいなあ!!」と感じます。一番最初に体感するのは、パラオ空港で飛行機を出た時の、あのもったりとした、ほんのり甘い得体の知れないフルーツの匂いが混ざったようなパラオ特有の空気です。東京の乾燥した空気に比べて湿度が高く、切れていたクチビルはすぐに元通りに復活します。カサカサになっていた鼻の穴もたちまち快適な状態に戻ります。(パラオ人と日本に一緒に行くことが今まで何回かありましたが、大体みんな鼻の穴がカサカサになって苦しんでいます。そういう僕もいつの頃からか?同じようにカサカサで苦しむようになったのですが・・・)

 バケイションから帰国した次の日のスケジュールは大体海にでることになっています。そしてパラオの海に出て、というか朝出勤のために家のドアから出た瞬間に感じるのは、まさに肌を刺すような強い日差しです。その日差しを浴びると光には重さがあるんじゃないかと感じます。ズッシーンと頭上から降りかかってくる圧倒的な光は、軟弱なバケイション帰りの男の頬を突き刺します。チーン。1日で「赤ら顔の男」にこんがり焼きあがります。

 店の前の桟橋をボートで出発して海に出て。美しく透き通った海と、ゆたかな緑をたたえるロックアイランドの島々をボートの上から眺めて。そして実際に海に潜ってパラオの素晴らしい海中風景に溶け込んで・・・「うお?俺はパラオが大好きじゃ?!!」と思っちゃうのです。

 みんな好きだと思いますが、僕も太陽の光は昔から大好きでした。学生の時には天気の良い日には公園で仲間達と弁当を食べて、午後の授業をさぼって芝生の上でよく昼寝していました。太陽をたくさん浴びて布団になったような気分でしたが、それが何ともいい気分でした。その大好きな太陽がここパラオでは惜しげもなく1年中降り注いでくれるのです。もう毎日いい気分です。

 パラオが好きでずっと住みついています。もう気がつけば7年半もいます。ダイビングガイドとしてパラオにやって来ました。パラオの海の中は言うまでもなく大好きです。また色んな人たちと巡り合えるこの仕事も大好きです。そして忘れてはいけないのがパラオのこのもったりと重たい香り漂う空気と、頑固に頬に突き刺さってくる強い日差しです。そう、この空気と日差しがある限り僕は毎日いい気分なんです。

 

 

渡辺 康太郎

石浦龍二 (いしうら りゅうじ)
2000年からパラオ、「ブルーマーリン」で
ダイビングのガイドをしている。好きな魚はマンタ。趣味は食べること。写真を撮ること。
URL: http://www.meluis.com/

 

 

vol.31 楽しさが伝わるガイド

なんてデカいエンジンだ!!!

イビングの楽しみ方は人それぞれいろいろあると思います。その楽しみ方のベクトルをなるべく多方面に向かって持っていることが、ガイドの懐の深さに繋がります。ゲストがダイビングに求めているものは様々です。下には?派という形で分類しています。以下に典型的な?派を紹介します。
(癒し系派)とにかくノンビリ、サンゴが綺麗なポイントやブルーホールなどの地形ポイントでボーっとしたいタイプ。
(大物派)ブルーコーナーなどの流れがガンガン流れる場所で大物や群れを見たい。
(マクロ派)珍しかったり、綺麗だったり、かわいかったりする小物を見たい。
(カメラ派)水中カメラを持っていて、いかに綺麗な写真を撮るかに熱中したい。
以上の4パターンが代表的なものかな?他にも沢山あると思いますが。 ゲストには上記のどの方向にもベクトルが向いている人もいるし、どの方向にも向いていない人もいます。どれか1つのベクトルに偏っている人もいます。「どの楽しみ方のゲストにとっても、ベストのものを見てもらう」という点にガイドは努力しなくてはいけません。パラオの場合大物を見たい人が多いので、ガイドはどの潮のタイミングでどのポイントでどのコース取りをすれば大物が見られるかは常に考えて潜っています。また小物好きの人のために常に新しいネタに敏感になっている必要があります。小物派のゲストのリクエストに応えるためには何処にどんな魚が住んでいるかを細かく覚えておく必要があります。

あとテクニックばっかりに集中して、ガイド自身が感受性を鍛えるのを忘れてしまうといけません。パラオでしばらくガイドをしていると、海の中の様子は分かるようになります。どこに何がいるか分かればゲストのリクエストに応えることができるようになります。でも淡々と作業をこなすかのようにリクエストの魚を見せているだけでは行き詰ってしまいます。そこを突き破るにはガイド自身の感動する心が重要になります。
このガイド自身が楽しむということはゲストの楽しみ方のベクトルを増やすことにも繋がります。ガイドが夢中になって楽しんでいると、今まで興味が無かったベクトルにも見せられる方に楽しさが伝わってくるものだからです。

以前ブルーマーリンの研修生でタカちゃんというインストラクターがいました。彼は以前沖縄でサンゴの研究をしていて、魚についてはそれほど詳しくないのですが、サンゴに対しては深い造詣がありました。ブルーコーナーでダイビングしても魚の写真はほとんど撮らずに、棚の上のサンゴばかり写真を撮っている変人です。僕から見てもかなり異常な人です。一度タカちゃんと一緒に潜った時、彼がゲストに水中スレートでサンゴのことを沢山教えているのにビックリしました。サンゴで長い間ゲストの興味を引っ張れる彼の知識もすごいと思いましたが、その水中での彼のスレートを書いている姿は体中から「サンゴってこんなにかわいいんです?!!大好きなんです?!!」っていう感情が溢れていました。その彼のサンゴ好きオーラに包まれながらサンゴの細かい説明をスレートで見ていると、ドンドン彼の世界に引き込まれて、いつのまにか私も彼のサンゴレクチャーを楽しんでしまっていました。まあ、これは極端な例ですが・・・

ガイドの好みの押し付けにならないように、バランスに気をつける必要がありますが、ガイド自身が水中を楽しむことで、ゲストは今まで気がつかなかったダイビングの楽しみ方(ベクトル)を発見することができるのではないかと思います。ウミウシにハマってもいいですし、ホヤにはまってもいいし、プランクトンにハマってもいいと思います。
知識を沢山持っていても感受性が無いガイドではダイビングはつまらないものになってしまいます。知識だけではなく、海に対して常に楽しみを見出す能力を持っている人が良いガイドで、懐の深いガイドに成長するんだと思います。まあ海が好きだからみんなガイドになったわけで、好きだからみんな魚に詳しくなるので、その心をいつまでも維持、持続することが必要なんでしょう。

伊井淳教石浦龍二 (いしうら りゅうじ)
2000年からパラオ、「ブルーマーリン」で
ダイビングのガイドをしている。好きな魚はマンタ。趣味は食べること。写真を撮ること。
URL; http://www.meluis.com/

 

vol.9 ガイドによってかわる海

ガイドによってかわる海

んにちは。ブルーマーリンでダイビングガイドをしている石浦といいます。仕事がダイビングのガイドなのでパラオの海のダイビングの魅力について書いてみたいと思います。

パラオに到着した初日にアシストとして後ろからついて潜ったブルーコーナーの衝撃は今でも忘れられません。 
僕はパラオに来るまでは完全にマクロ派ダイバーでした。大学のクラブでダイビングを始めたのですが、学生ダイバーの頃はガイドさんをつけずに自分たちだけでタンクだけ借りてよく潜っていました。もちろん自分達にガイドさんが見せてくれるような珍しい魚を探すノウハウもありません。
僕らはもっぱらチョウチョウウオやスズメダイなどの普通に潜っていて眼に入ってくるような魚を見てダイビングを楽しんでいました。そういった普通種と呼ばれる魚を見ては民宿に帰って図鑑を見ながら「今日はあれがいた、これがいた」など話をして仲間内で楽しんでいました。
そのようにして沖縄や伊豆にいる普通種の魚はその頃に大体覚えていきました。そしてそういうダイビングをしながら図鑑を見ていると普段よく見られる魚と、なかなか見られないようなレアものの魚の区別がつくようになってきました。何故なんでしょうか?人間って珍しいものとか今まで見たことがないものなどに理不尽に惹きつけられますよね。図鑑を見ていると珍しい魚とか色合いが綺麗な魚とか「いつかは見てみたい」と思うような魚がでてくるのです。そしてツアーに参加したときなどにガイドさんがそういった魚を見せてくれたりすると水中で叫んでしまうほど嬉しいんですよね。
そんなこんなでパラオに来るまでの僕にはレアものを見ること、見せてもらうことがダイビングの楽しさの中心でした。そんなマクロ派の僕にそれまでのダイビングの価値観がガラリと変わるような衝撃を与えたのが初日に潜ったブルーコーナーだったのです。

ルーコーナーでは大物、群れが簡単に見られてしまいます。しかもたまに当たるとかじゃなく、いつ潜っても潮さえ間違えなければほぼ確実に大物や魚群がみれてしまう安定感。今までのダイビングがマクロ中心だったので、このサメが普通に泳いでいるこの海には本当に度肝を抜かれました。ダイビングってこういう楽しみ方もあるんだ!!と目からウロコ状態でした。いかにも何かが潜んでいそうな豪快なドロップオフのガンガンに流れる潮の中で、アドレナリンが湧き出るような大物狙いのダイビング。こういったスタイルのダイビングの楽しみ方はパラオに来て初めて体験しました。 
このパラオの海には他の海域でアイドルになりえる魚がマクロも大物も含めてたくさん住んでいます。アイドルになりうる存在がたくさんいるがためにガイドとしては焦点を絞る必要がでてきます。他のエリアでアイドルになれる魚もここではみんな立ち止まることもなく素通りされていることが多いことが最初に驚いたことでした。
例えばアデヤッコ。1匹目のアデヤッコを見た時には「おおっ!!あれはもしかしてアデヤッコじゃないか!!」と感動していたのですが、ガイドは特に指差すことも無く・・・スレートに書くこともなく・・・よく見るとあそこにも!!こんなところにも!!とアデヤッコが普通に泳いでいるんです。

「パラオは何も探さなくても大物が次から次へと出てくるからガイドは楽だね。」と言われることもあります。でもアイドルがたくさんいるからこそ、ガイドによって焦点の当て方が違い、ガイドそれぞれのパラオの魅せ方が選択できる。パラオの海はガイドによって印象がガラリと変わるようなダイビングになります。ガイドとしても1人のダイバーとしてもマクロから大物まで飽きることなく探求のできる海。その懐の深さがパラオの魅力だし、ガイド冥利につきる海なんです。 

 

石浦龍二

石浦龍二 (いしうら りゅうじ)
2000年からパラオ、「ブルーマーリン」で 
ダイビングのガイドをしている。好きな魚はマンタ。趣味は食べること。写真を撮ること。
URL: http://www.meluis.com/